「……銀、さん……」
小さく声を絞り出したのは、
薄栗色の髪の少女。
薄桃色の生地に
大きく咲いた赤牡丹。
緋色の帯締め。
それを
掴み放さない男が
一人。
頑として放さぬ男が一人。
「……放し……て…」
「断る。」
「……おねが…ぃ…」
「断る。」
「……ぃ……ゃ…」
「断る。」
「……も、ゃ…めて…」
「断る。」
プツッ、
という音。
バチンッ!
という音。
その後に。
「放せつってんだろ
この糖尿天パー野郎ッ!」
両手を突き伸ばした先程の
眼の大きな少女
と
放さざるを得なくなる程突き飛ばされた、
確かに天然パーマともとれる
癖のある
銀の髪の青年。
この二人の
何処にでも在る
何処にも無い
恋のお話。
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