クリスマスが今年もやってくるー♪
という曲を聴くと、ああ今年ももうそんな時期なんだなあと思う。目の前に広げられた豪華なご馳走は全て笹川お手製のもので、にこにこ笑う山本とガハガハ笑うランボ、つまらなさそうな顔をしながらもちゃっかり肉を取り分ける獄寺や鼻歌を歌いながらシャンパンを飲む骸。そしてクリスマスにも欠かせない(むしろクリスマスだからこそ欠かせない?)ビールと焼酎をひたすら煽る綱吉に、その隣でケーキを黙々と食べ続ける雲雀。
一同がリビングに集まり、こうやって賑やかに食卓を囲う今日は冒頭でも言ったその時期。12月25日、クリスマスである。(ちなみに師走の家賃は月初めに納めることになっている大家のリボーンルール。)(何だそりゃ。)


「ねえ、ケーキなくなったんだけど。」
「まあ待て!もう一つ焼いてある!」

キッチンに走り、本日二つ目のホールケーキを用意する笹川を見た獄寺が思わずありえねえだろと零す。まん丸のケーキを半分にカットし雲雀にそれを渡す山本がさすがヒバリだなーと笑うのに、まるごとで良いんだけどと雲雀が眉を寄せた。その発言だけで胸やけを起こしそうになった獄寺が骸の手から奪ったシャンパンをぐいっと一気に煽るのに、何だか今日はほろ酔い気分な骸が面白くなさそうに獄寺からシャンパンを奪い返す。

「人の物を盗るのは良くないですよ。」
「ああ?」

てめーが言えた事かよ。懲りずにまたシャンパンに手を伸ばす獄寺の腕を、骸がばしりと叩き落とす。ぎろりと目付きを鋭くした獄寺と骸が睨み合うのに、よくもまあお酒くらいでそんなにムキになれるねと思いながら雲雀がいつの間にかぺろりとケーキを全て平らげていた。ねえ、と物足りなさを含む声に笹川が実はもう一つ焼いてある!とまたキッチンへ走る姿に、いい加減にしろ!と獄寺が叫んだ。(何個用意してあるんだ。)


「あ、そうだ。俺ヒバリにプレゼント用意してあるんだった。」

へへ、となつっこい笑顔をする山本がソファーの後ろに隠してあった包みを雲雀に手渡す。可愛らしいピンクのラッピングに包まれたそれを受け取った雲雀が、君も毎年よく飽きないねと言う。

「だってもう癖みてーなもんだし、それに好きな奴にはやっぱりさ…」

照れからか、言葉を濁す山本の姿に険悪な雰囲気だった骸と獄寺がごくりと唾を飲み込む。雲雀もじっと山本を見つめていた。毎年ねえ、と昔ながらの関係に骸が些かの嫉妬を沸かせるが、今はそんな何だかちょっと良いムードを出しつつある山本と雲雀を見ながら、笑ってはいるが全身から真っ黒いオーラを放つ人物の方が重要な問題で。
山本も酔っているのだろう。全く気付く様子もなく、ひたすら雲雀だけを見つめていた。

「む?奇遇だな。俺も用意してある。」
「え?」

これだー!叫びながら笹川がどこからともなく取り出したのは何とも巨大なバケツだった。こんなもんヒバリが喜ぶ訳ねーだろ!全くナンセンスですね、と獄寺と骸が毒づくが、それを見た雲雀はゆっくりと口元を緩ませた。

「ふぅん、覚えてたんだ?」
「当然だ!」

何この通じ合っちゃってる会話。不思議に思った獄寺がもしかしてバケツの中に何かが?と思い、ひょいと覗き込むとそこにあったのはみっちり詰められた黄色い物体だった。


「前、ヒバリがテレビで見たバケツサイズのプリンが食べたいと言っていたからな!」
「おげぇぉ!胸が!胸やけが!」
「ちなみにお前たちの分は材料や金の都合で作れなかった!」
「いや、僕たちはいりませんけどね。」

こんなの貰ったって困るだけですから。溜息をつきながら否定の意を示す骸の側で、雲雀は嬉しそうにさっそくスプーンを用意していた。山本のプレゼントの包みも開けられていて、中からは甘い香りの漂うクッキーやチョコレートが覗いて見える。(また見事な甘いもの尽くしだ。)


「ヒバリ、俺からもある。」

言い、にやりと笑った綱吉の言葉に何故か雲雀ではなく骸や獄寺の間に緊張が走る。立ち上がった綱吉がリビングから出て行き、そして帰って来た時に持ってきたものは何やら大きな紙袋だった。

「着ろ。」

…着ろ?まず連想したのは服で、雲雀に新しい学ランのプレゼントだろうかと一同がその紙袋の中身に一斉に注目する。怪しむような顔をしながら、紙袋の中身を取り出した雲雀の表情は一気に不機嫌に歪み、そして一同も唖然と固まる。それも仕方ない。取り出された中身を見た綱吉がにぃっと笑いを深くして。


「可愛いだろ?女用サンタ服だ。」

しかもミニスカート使用。赤を基調にしたデザインと白いふわふわのファーをつけたその服は毎度おなじみ復讐者製品、しかも今年のみ限定で希少販売の物であるコスプレ服だった。デザインや機能性、素材などがかなり良いためなかなかの値段のするそれは、最新カタログを見た骸が前々から目を付けていた物だった。(しかし財布と相談した結果、諦めるしかなかった。)どうして彼は自分が欲しいものをここぞと言わんばかりに…。綱吉と自分の財布事情を比べては骸が虚しさを込めた溜息を吐く。


「早く着ろ。」
「…絶対にやだ。着れない。」
「ああ、着せてもらいたいってか?」

じゃあ脱げ、と超ゴーイングな解釈をする綱吉が雲雀の学ランをこれまたハイスピードで剥ぎ取る。やだ、と暴れる雲雀を押さえ付けては目を細めて笑う綱吉はすっかり夜の顔になっていた。シャツのボタンを外された雲雀が本当にやだ、と首をふるふると振りながら抵抗する姿は何とも可愛いのだが、このままだと目の前でおっぱじめかねない。(むしろ絶対にするだろう。)

「クフフ!実は僕も雲雀恭弥にプレゼントがあるんですよ!」

見て下さい!状況を打破しようと骸が取り出したのは、ふわっとした黒い獣耳のついた、簡単に言えば猫耳カチューシャだった。(またマニアックなの来たなこれ。)

「猫耳サンタか。悪くないな。」
「え?」
「しかも黒猫。お前にぴったりだ。」
「もうやだ…」

骸の手からカチューシャを奪った綱吉の笑いがまた一層深くなる。どうやら一度点いた炎はそう簡単には消えず、むしろ今ので更に燃え上がってしまったらしい。



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