初恋という訳じゃなければ初めての行為という訳でもない。
じゃあ何でこんなに胸がドキドキして、下手したらこのまま心臓が破裂してしまうんじゃないかと本気で思うくらい緊張してるのかと言うと、それはやはり目の前の相手を心から愛しているから?
いや、別にそういう訳でもない。

「…あなた、本当に人間なの?」

真剣な表情をしながら聞いてくる雲雀の、その視線の先にある物を確認したディーノが苦笑いを零す。
ディーノの自宅に来てからもうすぐ一ヶ月。朝は同じベッドで目覚め、昼は仕事中でも常に行動を共にし、そして夜はまた再び同じベッドで眠りにつく二人の間には、いわゆる体の関係というものはなかった。
真っ先に体を求められるかなと思っていた雲雀が不思議そうに「しないの?」と訪ねても、ディーノは少し眉を下げて優しく笑うだけだった。


「イタリア人ってみんなそうなの?」
「みんなって事もねぇけど…つーか恭弥、見すぎだって。」

眠りにつく直前までキスをしたり抱き締めたりと、それはもう欝陶しい程の愛情を示すディーノがなかなか雲雀に関係を持ち掛けられなかったのには理由がある。悔しいけれど雲雀の初めてはとっくに奪われている事は分かっているので問題はそこではない。
細い腰や肩を見ていて思うのが、壊してしまいそうで怖いという事。乱れる雲雀に自分の理性が全て吹き飛んでしまいそうなのが恐ろしい。
そして人種、大人と子供。そこから来る違いが何より大変で何より大切な問題なのだ。


「恭弥が怖がると思って、なかなか言い出せなかったんだが…」
「怖い?僕が?…まさか。」

そんなわけない。そう言って完全に勃ち上がっているディーノのペニスを睨み付けるように目を吊り上げた雲雀がぎゅっと唇を噛んだ。シーツを握る手にも力が入り、先程よりも強い皺が出来ている。強がっている事は一目瞭然なのだが、プライドの高い雲雀がここでやめるのを許す訳はないだろう。そしてディーノもこんな状態でお預けというのは辛かった。まあ正直この一ヶ月近く、ずっと辛かったのだ。

「んっ!」

くちゅっと濡れた音を立て、ローションで滴らせた指を雲雀の中へと進入させる。奥へと進むにつれ雲雀の瞳が蕩けるように潤み、薄く開いた唇からは少し掠れた声が上がり、ふるふると小刻みに震える体を見ていると感度がものすごく良い事が伺えた。そしてそれがまたディーノの理性を荒く揺さぶり、もっと気持ち良くしてやりたいという衝動やもっと乱れて欲しいという欲求に拍車が掛かる。
二本、三本と指を増やし、しつこいくらいそこを弄っていると雲雀が弱々しくディーノの髪の毛を引っ張った。

「もう、やだ…」
「え?」
「それ…いや、」

中で動き回る指にびくびくと体を揺らす雲雀が泣きそうな表情でそう告げるが、しっかり慣らしておかなければ挿入の時に傷付けてしまうかも知れない。ましてや雲雀がたじろぐ程の大きさを誇るディーノのもの。痛い思いだけは絶対にさせたくないから我慢してくれな、と雲雀の頬に軽く唇を落としたディーノが再び手を動かす。
いやだと繰り返す雲雀に苦笑いするが、それでも抜き差しする指は止めない。たまに円を描くように中をぐちゅりと刺激すると雲雀の口からは甘い声しか聞こえなくなった。


「恭弥、そろそろ…挿れるぞ?」

張り詰めたディーノのペニスが雲雀の尻を擦り、それに息を詰めた雲雀が涙の溜まった目でディーノを見上げる。今まで自分のあそこの大きさについて深く考えた事など無かったが、好きな奴を傷付けてしまうかも知れないのなら小さい方が良いのかもなぁと本気で思ってしまう。(いや、それはどうよ。)現に雲雀はこうやって不安がって…


「とっととしなよ。言われなきゃ分からないなんてあなた馬鹿?」
「……。」

うん、精一杯の強がりだと思っておこう。非常に男前な態度の雲雀に何だか安心してしまう。ふっと微笑んだディーノがゆっくりとペニスを雲雀の中へと挿入させ、絡み付く内壁の熱さに体を震わせた。少し苦しそうに眉を寄せて浅い呼吸を繰り返す雲雀に申し訳なく思いながらも、満たされていく心に幸せだなぁと笑みが零れた。


「嬉しい。」

ありがとうの意味を込め、ちゅっと軽いキスを交わす。内壁を傷付けないようにゆるゆるとした動きで優しく抜き差しすると、ぎちぎちに締め付けていた雲雀の苦しさも和らいで来たのだろう。ディーノの腰の動きに合わせるように声を出し、うっとりとした表情で感じ入っていた。
子供なのにすげえ色気だと思うと同時に今まで雲雀を抱いて来た誰かに嫉妬してしまう。一度だけ雲雀の口から聞いた事のある『ツナヨシ』と言う名前の人間は一体どういう奴なのか。(聞いてみても彼は魔王だよとしか教えてもらえなかった。)(魔王って何なんだよ。)

「あ…っ…はぅ…」

ぎりぎりでポイントをずらしながら、まるで楽しむように与えられる刺激に雲雀の全身から力が抜けて行った。綱吉や山本たちとは違う、意識が全て持って行かれそうになるひたすら甘い快感。

「気持ち…い…」

うわごとのように呟いたそれは何よりも本音。
嬉しさで顔をくしゃくしゃにしたディーノの笑顔を見る余裕は雲雀にはなかったけれど、耳元で何度も何度も言われた愛してるという言葉と、そして苦しいくらい強く抱き締めてくる腕の温かさは遠退いて行く雲雀の意識の中に強く残ったままだった。



「とりあえず十万円払ってね。」
「なぁっ!?」

幸せに浸っていたディーノに、目覚めて雲雀がまず口にしたセリフに驚愕。(恥じらいながらおはよう、を期待していたらしい。)
いつか金なんか払わなくても雲雀を抱けるようになるのを目標に、ここからディーノの奮闘が始まるのだった。




































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