最近は割と平和な日が続いてるなあ。仕入れたパンを棚に並べながら、このコンビニ店長である家光の一人息子の姿を思い出す。
ツナは人より少しわんぱくだと家光は言うが、一般人のバジルからすればそんなレベルで通る訳がない。あれは人間として可能な範囲の行動を越えている。


「バジル、休憩入って良いぞ。」
「…はい。」

まずい。うっかり尊敬する店長の一人息子を人間じゃないなんて思ってしまう所だった。
じゃあお願いしますと言って休憩室に下がったバジルと入れ替わった家光がレジに立った時、店の扉が控えめに開けられた。
いつもならいらっしゃいませーとお決まりの言葉が飛び出すのだが、口を開いたまま何も言えない家光は店に現れたお客の姿をまじまじと見つめる事しか出来なかった。
だって、この状況をどうしろと?

「ヒバリ…?」
「…僕だったら…悪い、わけ?」

以前テレビで見た事のある、アキハバラ特集に出ていた女の子たちの姿が鮮明に思い出される。お帰りなさいませご主人様ぁと言いながら出迎えてくれるメイドさんたちの可愛らしさに、画面の前でうっかりニコニコしてしまったあの時。奈々も着てみないかーと言ったらバカ、と返されたあの時。雲雀にも似合いそうだよなと二人で勝手に盛り上がってしまったあの時。
絶対にこんな服を着る事はないだろうと思っていたのに。

「それ!何でメイド服なんだ!?」
「うるさい…大きな声出さないで…」

はあ、と息を吐き出しながらスカートの裾をきゅっと握る雲雀がお菓子の棚からチョコレートを取り、レジへと持ってくる。ふらふらした歩き方と赤く染まった頬、薄く涙を浮かべた瞳は体調が悪いんじゃないのかと家光を心配させた。それこそ熱が40度あるとか。そのせいで、こんな普段では考えられない行動をしてしまったのでは。


「やぁあっ!」
「ヒバリ!?」

がくんとその場に座り込んだ雲雀が俯きながら荒い息を吐き出す。
ふるふると震える体に、これはもしかしてかなり具合が悪いのではと焦った家光が慌てて雲雀の肩を掴む。

「触らないで…!」
「…!?」

よろけながらも何とか立ち上がった雲雀だが震える膝からはまたがくりと力が抜け、今度は体ごと倒れ込んだ。触らないでと言われたって、こんなの放っておけるはずがない。それが我が子のように可愛がっている人間なら尚更。


「ヒバリ、ちゃんと掴まっとけよ。」

腰と膝の裏に手を回し、ひょいっと雲雀の体を抱き上げるとメイド服のスカートがふわりと揺れる。一際大きく揺れた雲雀の体に違和感を感じながらも店の外に出ようとすると、それに気が付いた雲雀がじたばたと暴れ出す。
やだやだと家光を力の入らない手で殴り、下ろすとまた何とも言えない声を上げながらふるふると体を震わせる。それ早く会計してと先程レジに持って来たチョコレートを指す雲雀に、金はいらねえよと家光が笑いかけるも雲雀は俯いたまま家光の顔を見ようともしない。
どうしたものかなと困り果てた家光と雲雀の間に静かな空気が流れた時、どこからともなくブブブという何かが震える音が大きく聞こえた。

「ああーッ!」
「ヒバ…」
「やだ、あ…、もうやだ…もうだめ…!」

ブルブルと鳴り響く音に合わせるように声を上げ、涙をぽろぽろと零す雲雀がスカートのポケットから取り出した携帯を震える両手でぎゅっと掴む。
もうやめてと懇願するように話し出すその姿を見ながら、電話の相手が誰なのかが想像出来てしまった。まいったなと痛む頭をぼりぼり掻く家光がふと外を見ると、やはりと言うか何と言うか。思った通りの人物がガラス越しにこちらを見てにやにやと底意地の悪い笑みを浮かべている。


『さっきまではレベル2。今は4。』

そしてこのローターの振動は最高で5まで上げる事が可能。
電話越しに聞こえた低い笑い声に雲雀の息がぐっと止まった。

「あぅ――!!」

喉に張り付いたような悲鳴に近い声を発した雲雀が慌てて口を押さえる。休む暇もなくがくがくと震え続ける体と止まる事のない声に、他に客がいなくて本当に良かったと家光がうなだれた。(まあもちろん分かっててやってる事なのだろうが。)
珍しくガラスを割る事もなく、大人しく店内に入って来た(それが普通だ。)綱吉は家光をじろりと睨み付けてから雲雀の前に立つと、手に持っていたリモコンのスイッチをオフにする。止まった振動音と大きく息を吐いて涙を拭う雲雀の姿に、やっと終わったのかと溜息を吐き出した。


「興奮したか?」
「あのなぁツナ…。心配はしたけどな…」

さすがにそういった意味で興奮する事はありえない。まあこれが奈々だったら俺は大変だぞ!自慢じゃない事を自慢げに話す家光に、珍しく綱吉がにやりと笑った。
興奮したなんて言ったら殺すところだった、なんて言う綱吉の望んでいた答えだったのだろう。すぐにまたいつもの鋭い視線を家光に向けた綱吉が今度は雲雀を見つめる。

「立て。今度は公園に行くからな。」
「…いや…」

拒否権なんかねえよ。怒りを含ませた声で雲雀を見下ろす綱吉がまたリモコンのスイッチを入れる。
声を抑えるため、今度は白いエプロンを強く噛みながら耐える雲雀のスカートの中に手を突っ込んだ綱吉が下着をずり下ろす。濡れたそれが足首で止まり、しかも何故か女物だった事にかなりの衝撃を受けた家光だったが、さすがにこれはないだろと綱吉を止めにかかった。

「いい加減にしねーと奈々に言い付けるぞ!」

ヒバリをいじめてたって!完璧に子供扱いした発言だが綱吉にはなかなか効果的だ。自分の前ではどんな悪い事もする、人よりちょっとやんちゃな息子は母親にだけは心配させまいと努めるそれなりの孝行息子だったりするのだ。(そう思うと、俺って親だと思われてるんだろうかとちょっと寂しくなったりする時もある。)
チッと舌打ちした綱吉が持っていたリモコンのスイッチを切り、おもむろに雲雀のスカートを捲り上げた。

「見ないで…!」
「お、おう!」

ぐるりと背中を向け、二人のやり取りが聞こえないように耳を塞ぐ。可愛がってる子供たちの、まさかこんな姿を見る事になろうとはと少しだけショックを受けているのも事実。雲雀の中から入っていたローターを抜いた綱吉が家光の後ろ姿を見ながら喉を鳴らして笑う。

「ま、これでお仕置きは終わりにしてやる。」

だから最後に一つだけ。
ぐったりとした雲雀が綱吉の言葉に力なく首を振る。そんなの言えない、と俯きながらエプロンで顔を隠す雲雀のペニスをスカートの上からぐっと握った綱吉が楽しげに、言えるよなあ?と雲雀の顔を間近から見つめた。


「や、だ…もうやだ…触らないで…!」
「じゃあ言えよ。」

あいつも聞いてない。耳を塞いだままの家光をちらりと見た綱吉が更に激しくペニスを擦る。はぅ、とか弱い声を出した雲雀が涙を流し、諦めたように小さく呟いた。


「ごめんなさい…ご主人様…」
「上出来だ。」

さあ帰るか。身長差も何のその、雲雀を抱き上げた綱吉が店から出て行く。
店長ー、戻りますよー。そう言って戻って来たバジルが見たものは、耳を塞いでひたすらポニョを歌う家光の姿だった。

(何事…?)


























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