珍しくリビングにいる雲雀がぽりぽりと何かを食べている。普段、食事に執着しないというか物を食べているのをあまり見かけたことがないため(そもそもあまり家にいない。)その様子は珍しく、獄寺は思わずじっと見入っていた。
視線に気付いた雲雀がちらりと獄寺を見るが、どうでもいいと言った感じで軽くスルーするのに少しムッとし、一定のリズムで口を動かし続ける雲雀の隣にどしんと乱暴に腰を下ろすとソファーが揺れた。


「柄にもねぇやつ食ってんじゃねーか。」

縦に長く横に細い。チョコレートでコーティングされたそれ、ポッキーは既に空になった袋が一つ箱の中に入っていた。二袋目も数えるほどしか残っておらずこいつ甘党だっけかと獄寺は考える。そうこうしてる内に最後の一本を食べ終わった雲雀は足元に置かれていたコンビニ袋から今度はきのこの山を取り出す。
ぎょっとして思わずその袋を覗き見るとたけのこの里やクランキー、チョコパイ、スナック菓子だとじゃがりこやポテトチップスなどその他もろもろがどっさり詰め込まれている。
見ているだけで胸やけがしそうだ。

「お前まさか普段そんなもんばっか食って生きてんじゃねーよな…」

不摂生ヤローが。苦く言うと煙草ばっかり吸ってる人よりマシじゃないと返される。どちらも変わらないと思うし何よりこんな状況の雲雀を見たらボンゴレチームのお抱えシェフ、笹川は黙っていないだろう。何かと栄養にはうるさい男なのだ。

「貰ったから食べてるだけだ。普段からこんなのばかりはさすがに食べてない。」

言って摘んだきのこの山をぱくりと口に含む。いやいやポッキー食い終わってすぐにまた同じチョコレート類を食べるのがすげえよと獄寺はある意味関心しながら自分も一つ手に取り、小振りのそれを口に放る。
噛み砕くとじわりと甘い味が広がって、あーやっぱ甘いもんは駄目だと獄寺は眉を寄せた。
雲雀を見ると何でもないことのようにそれを食べ続けていて、お前の胃袋と味覚は女かと思う。というかそのたくさんの菓子類を貰ったと言っていたが一体誰に貰ったのか。雲雀本人は満足そうだがどうせくれるならもっとマシな選択があったんじゃねえかと差出人に毒づく。お菓子とはいえこんなに買えばそれなりの値段はするだろう。


「ったく…その金で煙草がどんだけ買えると思ってんだっつの。」
「そんなの本人に聞いてみたら。」

本人?
ガチャリととってもナイスなタイミングでリビングの扉が開き顔を覗かせたのは泣く子も黙る(いや、みんな逆に泣いてしまうか。)我らがボンゴレチームの十代目リーダー、沢田綱吉だった。右手にはお約束の缶ビール、左手には大きなコンビニ袋をぶら下げその中にはぎっちり詰まった菓子類が見える。にっと笑った綱吉は軽い足取りで雲雀と獄寺に近付き、テーブルの上にそれを置いた。

「プレゼントだ。」

また?呆れたように小さく息を吐いた雲雀は、まあ貰っておくけどとまた一つきのこの山を口に含む。その隣の獄寺は顔を真っ青にして固まっていた。完全なる無条件降伏。いや、条件はあるか。

「ああ、獄寺。」
「ひゃいッ!?」

裏返った返事を恥ずかしがる暇はない。
ぐいっと顎を掴まれたと思ったら顔を上げさせられ、かち合った目はそれはもう楽しそうに細まっていた。素敵な笑顔です十代目、なんてこんな状況でも綱吉バカを発揮しながらも体は恐怖で震えている。何という矛盾だ!
腰を上げた雲雀が手にコンビニ袋を持ち、静かにリビングの扉を開けて出て行ったのを横目で見る。ひらりと学ランを揺らしながらご愁傷様、呟かれたセリフがその場に響いた。


「1、三千円。2、五千円。3、八千円。」

どれだと思う?選択方式で問われた金額は雲雀にプレゼントした菓子の合計金額か。やはり聞こえてたのかと肩を落とし恐る恐る選択した番号は。

「2、ですか…?」

瞬間、頭の上から降ってきたビールがびっしょりと獄寺の頭を濡らす。
は、ず、れ。

「正解は4番の、0円。つまりタダ、だ。」

だから煙草は一箱も買えないんだなこれが。残念だなあ獄寺。さてこれから罰ゲームを始めるか。早口で捲し立てる綱吉は心底楽しそうだ。
4番なんてなかった!罰ゲームありなんて(予想してなかったわけじゃないが)聞いてない!そしてそんな口答えは天地がひっくり返っても出来ない!


「あいしてるよごくでら。」

棒読み万歳な言葉。
雲雀が落としていったのか、きのこの山が一つころりと転がっていて動かないそれに見てんじゃねーよ!心の中で叫ぶ。(馬鹿だ。)
チョコレートが溶ける前には終わりますように、なんてね。



































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