雲雀が甘党なことはボンゴレ一同、よく知っていることだ。そして綱吉が雲雀を特に贔屓していることも分かってる。(獄寺は納得いかないみたいだが。)
ハーゲン○ッツのティラミス食べてみたいなと珍しくリビングの群れで食事を取っていた雲雀がぽつりと呟き、それを聞いた綱吉がにやりと笑ったのをひっそり見ていた山本はまた何か企んでるなと背筋を震わせ、口に運ぼうとした大根をテーブルに落とした。(今日のメニューはおでんだ。)(このクソ暑い時に。)




「悪いねーお兄さん。貰ってくから。」

木刀についた血を払うように振り、血まみれで倒れるお兄さんの財布から何枚かの紙幣を取り出す。隣で仲良く転がるオトモダチとやらの財布も漁り、なかなか今日は大量だなあと自分を褒めながら山本は狭い路地裏を後にした。
暴れて少し喉が渇いたなと思い近くのコンビニに立ち寄ると、昨日雲雀が言っていた言葉を思い出す。ハーゲン○ッツってローソンにも売ってるよな?考えながらアイス売り場に近付くとどうしたことか。ハーゲン○ッツどころじゃなく、アイスというアイスが一つもない。おまけに至るところに破壊跡が。
まさかな…嫌な予感が頭を掠めるが、とりあえず喉を潤すためにミネラルウォーターを手に取り、さっと店内から出る。雲雀に買って行ってやったら喜んだかなーと少し残念に思いながら家へと向かう。


「ちゃおっス。」

程よく冷房の効いたリビングにいたのはソファーに座る雲雀と、そしてその雲雀の膝に座りながらもぐもぐ口を動かしている大家、リボーンだった。雲雀が手に持っているものは、雲雀が昨日食べたいと言っていたもので。

「ヒバリ、もう一口よこせ。」
「…まったく。」

あーん、と小さな口を開けながら待つリボーンに呆れながらもアイスを食べさせる雲雀の表情は心なしか柔らかい。何だ何だ!非常に羨ましいぞ!母親(?)と子供といった感じだが、それより深い何かがあるような、ないような。畜生、俺も子供に生まれてたら…!(意味が分かりません。)
飲みかけのミネラルウォーターを冷やすべく冷蔵庫を開ける。と、ごっそり積まれた板チョコが目に入り思わず何だこれと声に出して言ってしまった。後ろから雲雀が冷凍庫のほうも見てみなよと言うので開けると、これまたごっそり(これはもう無理矢理詰め込んだ感じだな。)アイスが入っていた。


「君も食べたかったら食べなよ。」

僕のだから、と言う雲雀にまさかお前が買ってきたのかと聞くと貰ったんだよと返される。相手は言わずとも分かる。さっきのコンビニはやはりあいつの仕業だったんだなとたまたま手前にあったスーパー○ップ、バニラ味を取り雲雀の隣へ腰を下ろす。じろりと軽く睨まれたがそんなことは気にしない。

「何か俺たち親子みてえだなー。」

父親と母親と子供!
膝にリボーンが座っているため立ち上がることが出来ない雲雀が殴り掛かってくることはない。稀に見る幸せな時間だなーなんて思いながらアイスを口に含み、じんわり広がるバニラを味わう。あ、マジで幸せ。なんてこの家に住んでる限りそれは油断という名目にしかならないのに。


「面白いことを言うな、山本。」

聞き慣れた声が鼓膜を響かせるのにアイスを喉に詰まらせた。(ひんやりした感覚が少し痛い。)いつのまに入って来たのだろう、リビング扉に寄り掛かる形でにぃっと笑う綱吉に部屋の温度が三度は下がった。
楽しそうに笑う綱吉が雲雀を指差し、

「母親。」

今度は山本を指差し。

「母親二号。」
(何だそれ!?)

その次にリボーンを指差し。

「お前みたいな子供はいらないけどな。」

仕方ないから父親になってやる。はい、お父さんですよー。なんて軽口で言うのに誰よりも焦るのは山本だ。案の定、リボーンも不穏な空気を発していた。(見た目的にはよくわからないが。)やれやれといった感じで雲雀が溜息をつき、リボーンの頭を帽子の上からぽんぽん撫でる。
子供をあやすような行動に綱吉が眉間の皺をぎっと強くし、リボーンが勝ち誇ったようにニヒルな笑みを浮かべ、いいなー、と羨ましがる山本の危機感はすっぽり抜けた。



「逆効果って分からないんですかねえ…」
「あいつが分かるわけがねー。」

帰宅した骸と獄寺が、ひっそりとその光景をリビング扉の隙間から覗いていた。巻き込まれる前にもう一度外に行きましょうか。骸の提案に首を縦に振った獄寺が、そーっと玄関へ向かった時。

「帰ったぞー!!」
「ランボさんも帰ったんだもんね!」

雄叫びのような声と無駄に甲高い声が響き、玄関が開けられた。

「てめぇらー!静かにしろよ!」
「君もですよ!」

何が何やら。冷静さを失った骸と獄寺の背中をひんやり冷たい空気が纏い、その二人の背後に何を見ているのだろう(まあ予想はつくけど!)笹川とランボの顔がぴきりと凍り付く。
がしっと獄寺と骸の首根っこを掴んだ人物はそれはもう温度なんか感じない声を発して。

「俺は今、ものすごく機嫌が悪い。」

わかってます。そしてそのストレス発散の矛先が自分たちに来るのも、もう覚悟しております。
引きずられる形でリビングに連行された二人は、未だ雲雀の膝でアイスを食べる赤ん坊に少しの羨望と、そして雲雀に対して恨みがましい視線を向ける。


「赤ん坊、口についてるよ。」
「取れ。」
「…仕方ないね。」

ゴォーッとすさまじい吹雪が室内に吹き荒れる。
綱吉の顔からは、いつもの意地の悪い笑みすらすっかり消えていて。
二人だけ別世界にいるんですか?戻ってこいよ…!と、切に叫んだ。





























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