最近、ひったくりやら万引きやら親父狩りが多いという噂を聞いたのは涼むためだけに入ったスーパーだった。五十代くらいのおばさんが三人で固まって話しているのを聞きながら、悪い、それ俺たちだと山本は手元にあったガムをポケットに突っ込む。

「何かねえ、十人以上の集団らしいわよ。」
「そう言えば昨日の夜、三丁目の鈴木さんとこの旦那さんが親父狩りにあったんですって。」
「怖いわねえ。」

聞き耳を立てながら疑問に思う。十人以上?それに確か昨日は夕飯が焼肉だと言うからメンバーは全員家にいたはずだ。(肉争奪戦だったぞ。)(雲雀は野菜しか食ってなかったけど。)
ボンゴレ以外の奴らの仕業なのかと考え自宅へと戻り、リビングで焼酎を煽る綱吉にそのことを話す。

「ってことを話してたんだけどよ。」
「…そうか。」

眉を寄せた綱吉が空になった瓶を壁に投げ付けると、見事に破片が飛び散る。山本が顔を引き攣らせるのに、にぃっと笑った綱吉がカレンダーを指差し、あの日にそいつらに会うかも知れないなと言う。
差されたその日はナミモリ町で毎年行われる祭りの日だった。



たくさんの人が屋台の前に群れる様子に雲雀が不機嫌そうに眉を寄せる。
隙ある人間からは財布を奪い、あわよくば店の売り上げごと奪え。気に入らない奴は叩きのめして、とりあえず金目のものを奪え。
綱吉からの指令に嫌々ながらも従い今日はもう六つの財布と高価な腕時計を盗った。帰りたいんだけどと言うと、これでも食ってろと渡されたのは林檎飴だった。

「調子はどうですか?」

聞き慣れた声に振り向くとそこにはパイナップルヘアーの人物が立っていた。しかし、その格好はピンク色の浴衣(女物です。)で、その隣にいる獄寺はげっそりした様子だった。

「可愛いでしょう?」
「変態。」
「失礼ですね。自信があるんですが。」

現に何人かに可愛いカップルと言われたんですよと話す骸は獄寺のテンションが下がっているのに気が付いていない。付き合ってられないとその場を離れ、仕方なく新しいカモを探すために歩き出すと後ろから泥棒だー!と叫ぶ声がする。
雲雀の横を走り去った人物は、手に店の売り上げらしきものを抱えていたがボンゴレのメンバーではなかった。

『俺たち以外のチームがナミモリ町に最近現れたらしい。』

見つけ次第、潰せ。
そう言われたのを思い出し、あれがそうなのかと後を追う。弱い群れを潰すのはいい暇潰しになるし、売り上げも手に入るなと思いながら行き着いた先は神社だった。十人以上いる柄の悪い連中の視線が一気に雲雀に向いた。

「何だお前?」

リーダー格と思しき色黒の男が雲雀に近付き、品定めでもするような目で見ていたその男の口が下品に歪む。なかなか綺麗な顔してんじゃねぇか。言いながら口笛を吹くと仲間たちが雲雀を囲み、たっぷり可愛がってやろうぜと醜い笑いをする男が雲雀の顎にすっと指を滑らせる。


「気安く触ってんじゃねえよ。」

ドスのきいた声と共にその場にいた何人かの男たちが倒れる。腹に一発、見事なまでにくらった男たちは呻き声を上げ、その頭を足でぐりぐりと踏み付けながら綱吉が現れた。

「てめえ!」

ナイフを取り出した男が綱吉に向かって行くが、それをあっさりと交わし今度は顔面に一撃。ゴキッと鈍い音が響いたのに仲間たちがひっと息を飲み、綱吉が手加減すんの忘れたな、まあいいけどなと笑う。


「ナミモリ町が誰の縄張りか、覚えておけ。」


うわああと悲鳴を上げながら逃げる残党にも容赦はしない。一人残らず再起不能にし、すっきりした顔で上機嫌に缶ビール(近くの自販機で購入。)を飲む綱吉の隣で雲雀は買ってもらったかき氷(メロン味)を食べながら、祭りフィナーレの花火を眺める。
あーこんなところにいたと山本や獄寺、笹川たちも集まり、シャツにべっとりとついた反り血に気が付いた骸が(模様だと思っていた。)さすがですねと賛辞を贈る。


「ナミモリ町を荒らしていいのは俺たちだけだ。」


自己中心的万歳とはまさにこのこと。
そんな夏祭り。

































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