.
□バレンタイン
1ページ/2ページ
「ふぁあ〜よく寝た」
本日2月14日は男のプライドと女の意地がぶつかりあう日、もとい、男が主に女からチョコを貰える日である。
昨日も酒を飲んで夜中に帰ってきた悟浄。起きたのはもちろん正午近く。
「おはようさん」
「おはようございます。もうお昼ですよ」
「わり、昨日飲みすぎてよ」
「はぁ、洗濯物出しといてくださいね。それとご飯は机の上です」
「サンキュ」
普段とあまり変わらない会話。だが悟浄はいつもより少し緊張しながら八戒と話していた。
(八戒はいつチョコくれんのかな?)
浮かれながら八戒が用意した昼食を食べて、今日一日八戒の傍にいることを決めた。
そうして、昼が過ぎ、夕方が過ぎ、夜になっても八戒が悟浄にチョコを渡すことはなかった。
(はぁ〜)
八戒は今夕食を楽しそうに作っている。このところすっかり主夫が板についてしまった。
さっき八戒の部屋を覗いてきたが、チョコらしきものは見つからなかった。
(八戒はチョコくれないのかよ〜)
普段よりも多くのタバコを吸いながら、悟浄はため息をついた。
(自分からくれなんて、かっこわりいしよ)
八戒がチョコを持っていないわけではないだろう。昼間来た悟空にチョコを渡していたのだから、どこかにチョコを隠し持っているだけだ。ソレを悟浄に渡すかは別問題だが。
(そういや、バカ猿に変なこと聞かれたな〜)
バレンタインの意味はなんなのかと。だが悟浄は自分のことで頭の中はいっぱいでなんと答えたのか記憶が曖昧だった。
「悟浄、ご飯ですよ」
「・・・・・・・」
自分の世界に入ってしまっている悟浄には、八戒の声も届かなかった。
_