長篇
□ふ、と思い出すのは貴方。
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ふ、と思い出すのは貴方 Side:雲雀
あの不可思議な出会いから数カ月たった
新入生たちも学校に慣れてきたようで、浮かれる草食動物も増えつつある。
まだ風紀委員の権力を把握していない若い草食動物たちにそろそろ制裁を加えなければならない時期のようだ。
そうぼんやり考えた。もう桜は散っていた
「委員長。」
「何。」
「明日の朝礼ですが…」
「僕が出る。」
「はい?」
「そろそろ警告の時期だから。」
「あ、あー…了解しました。」
穏便に終わるといいですね、と呟いて草壁が応接室をでていく。穏便に終わらないことを知っていながらよく言えたものだ。
「…そういえば」
あの子のクラスは何組だろうか
あの子の髪の色は…桜の色に映える紅茶色だったような気がする。
紅茶色は校則違反に含まれただろうか…?
「…まぁ地毛なら仕方ないか。」
試しに一度、校則違反だと捕まえてみようか。そしたらあの子は僕を見てどんな顔をしてくれるだろう?
悪戯心が溢れそうだ
今度の風紀週間を少し早めてしまおうか。
それとも抜き打ちで校門にでも立ってやろうか。…けれどその日が来るまでこの心を抑えてみるのも楽しいかもしれない。
新しい玩具を前にした様な気持ちを何週間か待つのは少々気に障るが玩具は逃げるわけではない。彼の笑顔がみたいと思った。…それは確かに事実だけど、それ以上に彼の別の顔に興味がそそる。…彼は風紀委員を知っているだろうか?
こんなにも心が踊るのは何時振りかな…
不思議な子供、名前ぐらい聞けばよかった