贈物

□甘く囁かに
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また、大切な思い出ができました。



【甘く囁かに】



キーンコーン カーン コーン

終業のチャイムで綱吉は目を覚ました。
どうやら6時間目はまるまる寝ていたらしい。

(昨日騒ぎ過ぎたからなー)

昨日は、リボーンの誕生日だったため、いつめもの如く合同誕生日会が開かれたのだった。

(雲雀さん…来なかったし。)

群れるのが嫌いな綱吉の恋人 雲雀は
『13日は行かないけど14日応接室においで。』
と、言って誕生日会には来なかったのだ。

(ま、わかってたけど。…けどなんで応接室に来いだなんて言ったんだろ。いつも行ってるのに。)

もともと少ない荷物をさっさとまとめて応接室に向かう。

いつものように人気のない応接室の前でノックをしようと綱吉が腕をあげた途端、応接室の扉が開いて綱吉はほわほわした物にぶつかってしまった。

「ッ!?」

慌ててその物体から顔をあげてみれば、その物体が黒猫のぬいぐるみで、それを持っているのが応接室の主、雲雀恭弥だということが分かった。

「ひ…雲雀さん。こんにちわ。」
「あげる。」
「はい?」

雲雀は綱吉からの挨拶を無視してぽすり、と綱吉の腕にぬいぐるみを押し付けた。

「あ、ありがとうございます…てなんでぬいぐるみ??」
「前見てたから。」
「覚えててくれたんですか!」
「当たり前でしょ。」

「綱吉のことだからね。」と微笑めば一瞬にして綱吉の顔は赤くなった。

「ほら、中入れば。」
「あ、はい。」

促されるままに中に入れば応接用の机に大輪の秋桜が置いてあるのが目に入った。

「あ、コスモス。」
「綺麗だったから摘みに行かせた。」
(風紀委員の皆さんも大変だなー。)

と思いはしたけれど確かに綺麗…とほのぼのしている。

いつものように綱吉がソファーに座れば雲雀が紅茶を入れにいき、陶磁器のカチャカチャという音しか聞こえなくなる。
一瞬の静寂の後に、雲雀が紅茶をいれ終えた音がした。
いれたての紅茶を綱吉の前に置いて隣に座る。

「…雲雀さん?」
「何。」
「今日はお仕事無いんですか?」

いつもなら紅茶をいれた後自分の机に戻って書類整理をする雲雀が隣に座ったので、綱吉は驚きの声をあげたようだ。

「今日は特別。」
「特別?…何かあるんですか?」
「…何か思い付かないの?」
「え?んーと………」

真剣に考え出した綱吉に雲雀はそっと溜め息をつく。

(本当に鈍いよね。)

「んー………。」
「今日君の誕生日でしょ。」
「…?はい。」
「だから。」
「だから…?」
「昨日のうちに仕事片付けた。」
「………雲雀さん。」
「ん?」
「大ッ好きです!!」

横からぎゅう、と抱き着いてきた鈍い恋人にやれやれ、と小声で呟いて

「知ってるよ。」

と雲雀は笑った。

「じゃあこの黒猫も…」
「気付いてなかったの?」
「は、はい///」
「ついでに言うとその花も。」

「みんな君の為。」と耳元で囁く。
その言葉にほんのりと赤かった頬をもっと赤く染めて綱吉は

「ありがとうございます。」

とはにかんだ。
その笑顔に満足したのか最上級の微笑みを浮かべて雲雀は綱吉を自分の膝の上に乗せる。

「ねぇ、何か我が儘言いなよ。」
「我が儘…ですか?」
「うん。」
「ここまでしてもらったのに、ですか?」
「足りないから。」
「足りなくなんかないですよ!!」
「いいから言って。」
「うーん。」

悩む綱吉を雲雀はワクワクとした目で見つめる。

「ぎゅう、てして下さい。」

言われたとおり抱きしめれば綱吉も雲雀の首に腕をまわして抱きしめてきた。

「いつもと変わらないけど。」
「けど、幸せです。」
「他。」
「他ッ!?」

まさかの発言に驚いた綱吉だったが雲雀の有無を言わさない目に促されてまた考え始める。

「むー…あっ!!」
「何?」
「今度の休み遊びに行きましょう!!」
「…本当に君は。」
「駄目…ですか?」
「むしろ喜んで引き受けるよ。」
「ありがとうございます!!」
(君の我が儘は可愛すぎるんだよ。)

「あぁ、そうだ。綱吉。」
「はい?」



『誕生日おめでとう。(生まれてきてくれてありがとう。僕の愛しい子。)』



2008.10.14

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