長篇

□間接的再会。
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間接的再会。 Side:雲雀






ざわざわと…人が集まる気配がする。






こそこそと囁きあう声が波紋を呼んで僕の心を波立たせては消えていく。
………気持ち悪い、吐き気がする。


「草壁。」

「は。」

「早く始めて。」

「で、ですが…」

「何。」

「い、いえ。人が集まり次第。」


草壁が教師達に話すと教師達は嫌そうに眉間に皺を寄せ、こそこそと囁きはじめた。


(言いたいことがあるなら言いにきなよ)


苛々する…群れるだけ群れて何もしない。…弱いから群れる、群れるから、弱い。


『えー、少々早いですが、朝礼を始めたいと思います。まずは、表彰伝達を…』


教師の野太い声でいつも通りに始まった。
教師達の居る場所から遠ざかり風通しの良い場所を陣取った僕は苛々とした気持ちを微塵も隠さず壇上を見つめる。

表彰、校長の話…どれもくだらない。
退屈になってきたのか生徒達の緊張の糸が少しだが緩められていくのが手に取るようにわかる。…次は生徒会長の話だったけ?


「それ、貸しな。」

「え、」

「何。」


進行役が持っていたマイクを奪いとれば、微かに不満そうな顔をした。すかさずトンファーをちらつかせると青ざめた顔は


「い、いや何でもない。」


と言ってそそくさと逃げた。
相手にするのも面倒だからほかっておく。


「委員長。」

「何。」

「一応前置きを…」

「………早くいれて。」

「はい。」

『えー、生徒会長の話は都合により省略します。次は風紀委員の話です。』


壇上に上がろうとも思ったが一年も見ているのか、と思いとどまった。今正体をばらせば楽しみが半減するような気がする。

壇上に誰も上がらないからなのか、何も知らない一年がこそこそと騒ぎだす。
正直、耳障りだ。消してしまいたい。
あの中にあの声は混じっているのだろうか…1番後ろの一年生の席。それを考えながらマイクの電源を入れた。


『黙りな。』


…一言で引き下がるということは噂ぐらいは聞いてる、というわけか。きっと彼も。


『君達に言うことは無い。ただ…』


二、三年生の息をのむ音が聞こえる。
ああ、そういえば毎年ざわめく一年を咬み殺してたっけ。今年は…やめておく。そんな気分じゃない。例えば、一年の前の方の奴の制服が乱れてても、三年が僕に喧嘩を売るように染めた髪をかきあげても。

今は、彼のことを考えていた。


『風紀を乱したら誰であろうと咬み殺すから。以上。』


マイクを草壁に押し付けて応接室に戻る。
仕事が終わったから昼寝でもしよう。
…そういえばあの子を捜すのを忘れてた。






出来れば風紀委員長として会いたくないな






もっと泳がせてから、虐めたい。
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