贈物

□神様なんていない。
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今日はクリスマス…いや、別に僕はキリシタンじゃないから関係ないけど。綱吉はどうなんだろうか…やっぱクリスマスといえば騒ぐものだとか思ってるんだろうか。

………何を考えてるんだ、僕は。

どうせあの家のことだ。クリスマスパーティーだとかなんとか言って、わんさか騒いでいるんだろう。考えただけで苛々する。


そんなことを考える雲雀が歩いている街中もキラキラとネオンが輝き、クリスマスモード全開である。

(今日は帰るか。)

気まぐれな考えで雲雀はくるりと華やかな町に背を向け家路を急いだ。

「…ばりさ…、雲雀さん!!」
「………?」

名前を呼ばれた気がして振り向けばそこには先程まで雲雀の頭の中にいた彼が雲雀の方に駆け寄って来ていた。

「綱吉…?」
「良かった!見間違いじゃなかった。」
「どうかしたの?」

余程急いだのか冬だというのに綱吉の額にはうっすらと汗が浮かんでいた。

「あ、いえ…どう、という訳じゃ無いんですけど…」

と、言いながら綱吉は片手に持っていた大きめの紙袋から茶色の小さな紙袋を取り出し、雲雀に手渡した。

「どうぞ。」
「…?何、コレ。」
「今日はクリスマスなので。」
「……だから?」
「クリスマスプレゼントですよ!」
「くりすますぷれぜんと…?」
「はい!雲雀さんで最後です!」

ガサリ、と紙袋を開けてみれば紫色の毛糸のマフラーが入っていた。
目立つ訳では無いが綺麗な紫色が上品だ。

「コレ…」
「今年の冬は寒いですからマフラーにしてみました。…あ、けど使うか使わないかは雲雀さんが決めてくれれば良いんで…」
「他に誰に配ったの?」
「?獄寺君とか山本とかクロームとか…」
「そう(あいつ等も貰ったのか)。」
「まぁ皆のは母さんが編んだんで売り物みたいに綺麗ですけどね。」
「…僕のは誰が編んだの?」
「………。」
「綱吉?」
「か、」
「か?」
「母さん、」
(なんだ、同じか。)
「母さんと俺が編みました。」
「へー、…え?」
「母さんと俺が編みましたっ!」

真っ赤に頬を染め怒鳴るように言い切った綱吉(迫力は無い)に一瞬雲雀は言葉を失った。

「君が、編んだの。」
「は、はい…。母さんみたいにはいかなかったんで、渡すか迷ったんですけど………母さんが一応所々手直ししてくれてるんで大丈夫かな、て思って…」

確かに雲雀のマフラーには糸が緩いところもあるが下手という訳では無い。むしろ男子中学生が母親の手を借りたとはいえここまでマフラーを編めるのは凄い。

「…君、不器用じゃなかったんだね。」
「く、苦労したんですよ!」
「うん。そうみたい。…頑張ったね。」
「あ、ありがとうございます…。」

雲雀に褒められさっき以上に頬を赤くしてボソボソと綱吉は御礼を言った。

「こちらこそ、ありがと。」

にこり、と微笑んで綱吉の頭を撫でる。

「えへへ。」
(可愛い生き物。)
「あ、綱吉は今から暇かい?」
「へ?」
「別に暇じゃないなら良いけど…」
「いえ、全然暇です!!」
「意外。家でパーティーとか開くのかと思ってた。」
「や、母さんが好きなんでパーティーはしますけどクリスマスはランボ達が主役なんで、今年は俺は皆にプレゼントを渡して終わりです。夕食までには戻ってこい、とは言われましたけど…」
「じゃあ付き合ってもらおうか。」
「何にですか?」
「買い物。」

雲雀はさっき立ち去ったばかりのキラキラとした街へと歩を進める。勿論、雲雀の大切なあの子へのお返しを買うためだ。

「あ、待って下さいよ!雲雀さーん!!」
(まったく…僕らしくないな。)
「早くおいで。日が暮れる。」
「そこまで言います!?」

雲雀の横に綱吉が並び、なんとも言えない甘ったるい雰囲気になる。…当の本人達は勿論気付いてなんていない。

「雲雀さん、何処行くんですか?」
「内緒。」
「教えてくださいよ!」
「駄目。」
「雲雀さーん。」

ここで雪でも降ればもっとムードがでるんだろうが神様はそこまで馬鹿ではない。
ここで雪なんて降らせてしまえばこの甘ったるい奴らに砂糖を振り掛けることになるからだ。

…もしくは、この世に神様なんていないのかもしれない。

だって普通神様の生まれた日にいちゃつく人はいないでしょう?それに神様だって自分の誕生日にいちゃつかれるというのはなんとも不愉快なのでは?

…それとも神様はそれを望んでいる?






それは実在するかすら分からない神様だけが知っている…。

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