長篇
□この心を私は知らない
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この心を私は知らない Side:雲雀
馬鹿じゃないの、なんて今更思った。
応接室にも帰らず自分の家に帰り、持ってきてしまった生徒手帳を机に投げ捨てた。
(馬鹿げてる、)
もう一度言い訳がましくそう思った。
僕はアレが泣いてるように見えた。
……違う、泣いてれば良いと、思った。
泣けば良いと、そして、
「僕に、赦しを請えばいいのに、」
僕の嫌いな草食動物の様に。
泣き、叫び、逃げ、無様に赦しを請えば、僕に赦しを請うならば、僕は此処まで気にしなかっただろうに。
どうしてあんなにも諦めた目をする、
その癖にあんなにも人間らしく笑うなんて
「君は何に絶望して、何に心を許すの、」
それを知った時、僕は何を知るのか…
僕は知らない。
そして自分の心の有様も、僕は知らない。
『一人で泣くのだけは、許さないから』
泣くときは、僕の横でだ。