贈物
□優しい恋の話をしよう
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幼なじみは超が付くほどのイケメンさん。クールで無口で出来る男。喧嘩も強くて不良の頂点どころかこの町の支配者なのに優等生な風紀委員長様。
沢田の友人達は沢田の幼なじみをこう評価している。風紀委員長だとか成績が良いとか後半は確かに、と思うが沢田の幼なじみ・雲雀恭弥はクールというより興味関心事が偏り過ぎて色んな事に興味がないだけだし、無口なんじゃなくて話すのをめんどくさがっているだけだし、気分屋だから出来る男というよりやろうと思えば出来る男、だ。
超が付くほどのイケメン、というのも見慣れてしまったからあまり実感はわかない。これを言うと大体の場合「お前は美意識が破綻している」と苦言が飛んでくるのだ。沢田としては不本意だがそう言われるのだからそうなのかもしれないと思う。
「ねえ、恭ちゃんはどう思う?」
「なんでそれを話の渦中の僕に聞く訳?」
「本人に聞くのが一番でしょ?」
「君、馬鹿じゃないの。客観的な判断を本人がくだせる訳ないでしょ。」
「えー、恭ちゃんなら出来るよ。」
「君、僕を何だと思ってるの。」
「さっきも言ったじゃん。やろうと思えば出来る男、だよ。」
「無理。」
「えー………ケチ。」
「大体、自分で自分をイケメンだとか言うのて、どうかと思うんだけど。」
「そう?良いんじゃない?」
「何、その適当な返事。」
「どう考えるかは人それぞれ、て恭ちゃんいつも言ってるじゃん。」
「じゃあ今回も同じ。人の美意識も人それぞれだよ。」
「適当!」
「さっき綱吉も同じこと言ったくせに。」
「うー……」
「ほら、口より手を動かして。」
「はーい。」
ポンッと沢田は目の前の書類の所定の位置に【雲雀】の文字が彫られた印鑑を押していく。
やろうと思えば出来る男がやろうと思ってくれなくて溜まった書類片付けの手伝いだ。
「あ、これ期限今日までじゃん……何やってんの恭ちゃん。」
「煩い。」
「手伝ってあげないよ。」
「僕は頼んだ覚えはない。」
「ちぇっ。可愛くない。」
「女子に可愛いて言われても嬉しくない。」
「え、男の子にならいいの?」
「咬み殺す。」
「…ですよねー。」
「君こそ、可愛いて言われたら不機嫌になるじゃない。」
「当たり前だよ。世界には、てか学校には俺よりも可愛い子が沢山いるんだから。失礼じゃんか。」
「俺、て言わないの。」
「わたしよりー。」
「ふーん。」
「ほら、恭ちゃんも手動かして!」
雲雀の幼なじみ・沢田綱吉は男の名前ではあるが勇ましさの欠片もないとにかくドジな女の子。何もないところで転ぶし、人によくぶつかるし、よく喋るかと思えば実は超が付く人見知り。成績だって悪いし目立つことも嫌い。何をやらせても平凡か平凡以下。
でも慣れた相手には馬鹿なくらいお人好しで優しくてよく笑う。スタイルだって少食だから細めだが女性らしい感じで悪くはないし、笑顔もドジをしでかしたあとの申し訳なさそうな顔も可愛い。しかしそれを大多数は知らない。そう、沢田のテリトリーに入って初めて沢田の魅力は分かる。
自分の顔の良し悪しなど雲雀は知らないし気にしないが沢田は学校で一、二を争うくらいには可愛いことを知っている。
「……間抜け。」
「…………いじめ…?」
「今度ケーキおごってあげる。」
「やった!」
いつまでも間抜けで良いと思う。自分の魅力を知って安売りするぐらいならそのままずっと少数の可愛い草食動物のままで。
そう雲雀は思うのだ。