贈物

□愛し愛され君いづこ
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6時半ぴったりに開く門扉に今日も安堵する。1日が始まって良かった、変わらなくて良かった、昨日通りで、一昨日通りで良かった。


「おはよう、雲雀。」


雲雀さんと話すための低めの声に、可愛いげのない学校指定ジャージ姿。ぺったんこな胸は細い足を見たとしても男子と思わせるには十分な存在だ。大きな門を潜って来た5つ年上の青年に精一杯笑いかける。


「おはよう。」


にこりともせず、こちらに視線も向けずに道に沿って行く雲雀さんの横に並んで今日も変わらない彼の人を見上げた。特に話すこともなくて、いつも通りの十字路で別れる。中学校は並盛町の中心寄り。雲雀さんの高校は町の外れ辺り。一度もこちらに視線をくれなかった彼が曲がり角を曲がって行ってしまう。


「いってらっしゃい、雲雀さん。」


しっかりとした足取り。凛とした背中。肩に学ランを掛けた彼独特のスタイル。けれど今の雲雀さんは空っぽだった。ただ、繰り返しているだけ。6時半に家を出て、挨拶を返して、学校に行く。隣に俺がいるかなんて関係ない。俺がどれだけ背伸びしたって、あの人を真似たって、足元にも及ばない。


「お兄ちゃん…」


ねえ、今何処にいるの。
俺じゃ駄目なんだよ、お兄ちゃんじゃなきゃ雲雀さんは笑ってくれないんだよ、ねえ、……何処にいるの…?


 
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