贈物

□すれ違い、恋煩い。
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「『女装の会』…ですか?」

「違う違う『華を咲かせる会』。」


隣を歩く転校生の獄寺隼人にあるきっかけで尊敬されてしまった沢田綱吉は苦笑いを零した。


「うちってエスカレーターでしょ?だから獄寺君はピンと来ないかもしれないけど…まぁ、この学校は少し変わってるんだ。」

「男子ばかりじゃむさ苦しいからって一年生を女装させるなんて無いですよ!男としてのプライドが許しません!!そんな仕事受ける奴なんてろくな人間じゃ無いですよね!!!」

「うん…そうなんだけど………」

「おや、獄寺隼人君。そんなこと言っていいんですか?」


沢田達の後ろから音もなく『華を咲かせる会』のメンバー(生徒会からの命令で理不尽にも入ってしまった一人である)六道骸がクフフ、と笑いながら現れた。


「て、てめーは六道!!俺の後ろに立つんじゃねぇよ!!!」

「貴方はどこの暗殺者ですか…。」

「てか『そんな事』て当たり前だろ!?てめーみたいにフリフリのドレス着てクフクフ笑いたくなんかねーんだよ!!」

「仕方ないじゃないですか。やらなきゃ単位とれないんですよ?留年するぐらいならフリフリだろうとフワフワだろうと着るに決まってるじゃないですか。」

「だからってな!!!」

「そ・れ・に、君の大好きな綱吉君も僕と同じですよ♪」


沢田は六道に肩を組まれ、あー…と遠いところを見た。…心此処にあらず。


「さ、沢田さんが………?」

「通称プリンセス・ハニー。立派なお姫様ですよ。」


六道の言葉に回転の良い獄寺の頭は一瞬にしてフリーズした。

『女装』『変態南国果実』『沢田さん』

という三単語が頭を駆け巡ったあと、覚醒してきた頭で獄寺は必死に考えた。


(確かに沢田さんは可愛らしい。一瞬女かとも思った…だけど実は女装して男どもの『華役』をなさっていたなんて………。待てよ?沢田さんが可愛らしいのは分かったがあんな危機感皆無な方が変な女物着たらやばいんじゃないか?血迷う奴なんかが出たりして………あー!!…………それは駄目だ。それだけは防がなければ…となると俺も此処で大人しく制度に参加すれば…)

「…何してるんだろ、獄寺君。」

「戦ってるんですよ。」

「は?何とだよ。」


約五分後、現実に戻って来た獄寺は制度に大人しく参加する事を決めたので三人で生徒会室に向かい、会長のその旨を伝えた。


「獄寺君…良かったの?」

「ある程度特典もつきますし、一年ぐらいちょろいですよ!」

「お披露目式は一週間後だそうです。」

「うわ、早っ!」

「家庭科部は徹夜みたいですね。」

「……ご愁傷様…。」

(俺が沢田さんを守るんだ!!)


個人個人(主に獄寺)が様々な思いを抱きながら、一週間という短い時間が風のように過ぎていった………。
 
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