長篇

□…久しぶり
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…久しぶり Side:綱吉






会いたい、会いたい、会い、たい…






血が止まるまで、とベンチに座ったら、急に冷たい風が身に染みだした。
よいしょ、と身を丸めて膝に顔をおしつけて薄暗闇な中、目を開けて閉じてを繰り返す……何もすることがなくて、けどなんだか帰りずらい。

この状態、他の人が見たら変に思うだろうなぁ、なんて、はは、人事みたい。


「…沢田……?」


ん?…誰か、俺を、呼ん、だ……?
しかも、なんだか、すごく……


「雲雀、さん……」


期待していたけど、ありえない、と切り捨てた雲雀さんが俺の目の前にいた。
初めて会ったときと少しも変わらず、記憶よりもなお綺麗な人。
何故か優しさを求めてしまった、人。

とん、と雲雀さんがベンチに腰かけたのを見ていたたまれなくなった俺はまた同じ体勢に戻った。
雲雀さんに会うと変な意地がでてくる。
よく見られたい、とか、強くいたいとか。
幻滅、されたくない、とか。

その割には優しくしてほしくて、……。
親切で優しい雲雀さんに、俺は甘えている…会ったのはたった二回だけど。

どうして、そんなに優しいんだろう。
どうしたらそんなに、優しくなれるんだろう。羨ましい。俺には眩しい。


「…………雲雀さん、」

「…何。」


どうしたら、そんなに強くなれますか。
…そんなこと聞けるはずもなくて、何も、言わなかった。それに、言いたいことはそんなことじゃない気がする。
もっと、なんだろう、……何か言いたい…
つい雲雀さんのこと考えちゃうんです、なんて、ストーカーみたいな台詞。

何も言わない俺に苛立ってるかな。
そう思った瞬間にふんわりと頭を撫でられて、すぐにベンチから立ち上がる音と土を踏み締める音が聞こえた。

どうしようもないぐらい泣きたくなって、何故か学ラン姿の雲雀さんの後ろ姿を見ながら一人、目に涙を溜めた。






世界に認められた、気がした。






泣いてもいいのに、て。
優しく優しく、背中を押された…。
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