贈物
□はっぴーばれんたいん
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沢田綱吉の教師になるための準備期間は、もう二週間が経過しようとしていた。
世の中が浮足立つバレンタインデーがもうすぐやって来るのだ。
そして、ここに一人、愛の日に浮足立っている教師がいる。
「楽しみだよね、」
「へ?」
生活指導室の校庭がよく見える窓側の席で雲雀恭弥はニヤリと微笑んだ。
「バレンタイン、だっけ…あれ、」
「あ、はい。チョコレートをあげたりするアレですよね。」
「うん。」
(意外だな…雲雀先生がイベント事で楽しみだ、なんて……。)
沢田が他の先生に聞いた雲雀の逸話は明らかにイベント嫌いだと告げていた。
入学式は大体、体育館にいなくて、体育祭は職員室から出ない。文化祭では出し物を一軒一軒見て回って規制から外れたものを壊していく壊し屋。
クリスマスの時は他の先生から貰ったプレゼントを叩き壊してしまったらしい。
「なに意外そうな顔してるの、」
「え!そそそんな…いや、あのですね………そう!やっぱりチョコレート貰えるのは嬉しいのかな、てですね。」
「そんな訳ないじゃない。」
「はい!?」
「学校に菓子類は禁止。」
「え、そうです…けど……」
「持ってきている奴がいる、て言いたいんでしょ?流石に数が多すぎて指導しきれない…。」
「ま、まあ…」
「いちいち反省文読むのも面倒だし。」
「ですね。」
「けど、バレンタインの包装みたいなものを堂々と持っている奴を制裁しないわけにはいかないでしょ?」
「まあ……………………もしや…」
「あのド派手なものを持っている奴は反省文なんてまどろっこしいものを無視して咬み殺せる…バレンタイン、…いいよね。」
(うっとりと微笑むこの悪魔を俺は止めた方がいいのだろうか…)
そんなことを考えた週末。
土日明けの月曜日、血を見ることになりそうだ、と沢田はげんなりした。