長篇

□この心を私は知らない
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この心を私は知らない Side:綱吉






そういえば、雲雀さんだけでした。






俺は、いつも空気だった。
…空気と言っても酸素と二酸化炭素以外のところ、必要でも不必要でもない、ただなんとなく存在している、そんな感じ。

好かれてる自信もないし、嫌われてる自信もない。ああ、沢田でしょ?で終わる生物なんだと、思う。それで良いと思う。


「今までそうだったし、今更だし。」


みんな俺の中身は薄っぺらいと思ってる。
確かに薄っぺらいけど決め付けられるのもなんだか嫌だなぁ…だから認識されると嬉しくなるのは、悲しいかな、人間だもん。

例えば、真っ直ぐ俺を見てくれるとか、名前を呼んでくれるとか、話をしてくれるとか、微笑ってくれるとか、…優しく、してくれる、とか。

なんて雲雀さんと会話をしたあの日を思い浮かべて指折り思い出す。雲雀さんと話せて楽しかったこと嬉しかったこと、…ドキドキ、したこと。


「不思議な、雲雀さん。」


なんであんなにも嬉しかったんだろう。
どうして、ドキドキしたんだろう。
どうでも良い事にした事があったんです。






『それは、なんて名前だったかな、』






それはね、あのドキドキに似てる。
誰かに期待してしまうことに似てる。
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