贈物

□未完熟果実
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世の中は甘くない。
そんなこと思い知るのはもう少し後が良かったなぁ、と、この時間何人の生徒が思っただろうか。

学生達が憂鬱で一杯になるテスト期間。
早く帰れるから良いけど…と微かな幸せがあるように自分に言い訳しながら半ば自棄になって、この時間も生物のテストをこなす………はずであった。


((全然分からん…!!))


クラスが一つになった。
たかが生物、されど生物。
生物を暗記ものと思うことなかれ。
雲雀の作ったテストは大層難しかった。


(穴埋め問題も記号問題もほとんど無いじゃん…やばい、どうしよ……)


単語能力も必要な説明問題の前に、何度も沢田を救ってくれた鉛筆転がし法は通じなかった。そして無情にも時は過ぎ…


「はい、止め。後ろから集めて。」


終わった瞬間絶望とも文句ともとれる溜息が漏れる。もはや全員言葉も発せない。
それは採点をした雲雀も同様だった。


「…なに、これ。」


ほとんど白紙に近い解答欄に目を疑う。
どの答案用紙も同じ状態だ。
書いてある者もいるがほぼ出鱈目。
答えが書いてある、とは中々言い難い。


(記述を出し過ぎたか…いや、これくらい普通でしょ。……どれもこれも、本来なら全部赤点…)

「雲雀先生、」


あまりの出来の悪さに頭を抱えていた雲雀が顔をあげると、同じ生物担当の女性教師が立っていた。


「採点どうですか?……すいません、来たばかりなのにテスト作成から採点までさせてしまって……いつも七瀬先生がテストを作成してくださっていたんです…」

「別に、」


雲雀はまた採点に意識を戻す。
会話が続かずに気まずくなりながらも女性教師は頬を染めつつ労うと自分の席に戻って行った。即座に隣の席の女性教師に嬉々として会話を自慢する。


(欝陶しい。)


点数をパソコンに打ち込みながら、雲雀は溜め息をつく。


(男に色目を使う前にこの大量の赤点の始末の方法考えなよ…とりあえず今回は…)


と、今後の対策を考えつつ、自分の担当クラスで欠点が出るかもしれない危惧に焦りを感じるのであった。


 
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