贈物
□私たち、恋愛中
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口論はどこをどうしたのか何故か沢田の家で御飯を食べる話で纏まり、応接室は空になった。放置されたディーノとディーノの携帯がひっそり、まるで絵画のようになっている。つくづく報われないイケメンである。
「雲の人、ボス…?」
六道を探しにやってきたクロームにすら、すっぱりと無視され、扉が無くなった元出入口の横で目覚めたディーノがさめざめと涙を零す。
「たねうま、の、人?」
「誰だそんなこと教えた奴!」
「骸様が…」
「…………………………あっ、そう。」
「ごめんなさい。」
「いや、クロームちゃんは悪くないよ。」
元々俯きがちな顔をしゅん、とさせているように(ディーノには)見え、思わず手を伸ばして骸同様、残念な髪型になっているクロームの頭を撫でてやろうとするとやんわり避けられる。タイミングが悪かったのかと思い再度試すとやはり避けられた。
今度は1メートルほど避けられた。
「え、いや、…あの?」
「骸様が…たねうまの人に近付きすぎると襲われてしまうから、気をつけなさいて……私、戦うの、苦手なの。嫌い。」
「いや、俺、襲わねーよ?…ほら、大丈夫だからよ。」
「雲の人も、ボスに同じ事を、言ってた。…………たねうまの人?」
「いや、も、…なんか。」
返す言葉もなくうなだれるディーノを心配そうに見るもやはり距離が遠い。その距離がなんとも言えない悲しみを産む。
「………たねうまの人、私ボスに相談してみるわ。骸様とどうしたら仲良くなれるか……だから、泣かないで。」
「く、クロームちゃ、ん…!」
もはや種馬呼ばわりのショックも薄れ本当に気遣っている様子のクロームの優しさに違う意味で涙が零れそうになった。
「でも、骸様が本気で一言でも嫌だ、って言ったなら……」
ゴクリ、と我知らずディーノは唾を飲み込む。真剣な目でクロームはディーノを見つめた。
「絶対にあなたと骸様を会わせないわ。」
そう言ってからは何も言わず、クロームは応接室前を去って行った。
ディーノの胸に深々と釘を刺して。
勝負のクリスマスが始まろうとしていた。