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□ドラクエ11裏夢
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20180305
甘い夜に溺れるの
「ひと瓶飲んだら綺麗になれるよ」なんて上手い謳い文句に誘われて、見ず知らずの商人が売っていた薬を買った。値段が安かったし、物は試しにと楽観的に考えていたのである。買った後、瓶を受け取った私を見てにんまりと微笑む商人を胡散臭いとは思ったが、案外私も誘い文句に浮かれていたらしい。効果がなかったらそれはそれで良いか、なんて軽い気持ちでいたのだ。
今まで生きてきた中で、美容とかおしゃれに興味を持つ事は少なかった。毎日旅をする私にはあまり必要のないことだと思っていたからだ。
でも、時間を共にするパートナーが出来てからは話が変わってしまった。自分が好きな相手にはいつだって可愛いと思って欲しいし、出来るだけ綺麗な身体でいたいと思うようになったのである。無理のない範囲での努力だけれど、最近綺麗になったな、と好きな人から言われたら凄く嬉しいと思うのだ。
子供みたいにウキウキしながら宿の部屋へと戻り、使用法が書かれた紙を読む。コップに注いだ水に、瓶に入っているピンク色の液体を流し込んで、よくかき混ぜたら準備は完了、後は飲むだけだ。
……そこまでは良かったのだ。本当に、そこまでは。そこから、折角だからお風呂に入ってからの方が効果があるかもしれない、なんて考えて、その場から離れてしまったことがきっとよくなかったのだろう。
だって私は今、何故かカミュに押し倒されて、キスをされているのだから。
「カミュ、ぅ、ん……んっ、」
押し付けるように触れられて、瞬く間もなく舌を捩じ込まれる。戸惑っている内にその熱い舌で絡め取られてしまい、ちゅう、と音を立てて吸われた。
慣れない感覚に身体が跳ねさせていると、彼はもっと、と言わんばかりに必死に舌を絡めてくる。唾液が混じる音がいつもより大きく響いていて、なんだか恥ずかしい。
カミュと私は恋人関係にある。だからこういう事は経験済みだし、突然キスされる状況だってそうおかしな事ではない。……けれど、呼び掛けても応じてくれないのは、どこか違和感があった。
その違和感が何なのかを確認するためにも一先ずカミュから離れようと思うのだが、手首ががっしりと掴まれていてビクともしない。
一体何だと言うんだろう。お薬を飲むぞ、とルンルン気分で風呂から帰ってきたというのに、なんたってこんな状況になっているのだろう。恋人からの深いキスに蕩けさせられているこの頭じゃ、さっぱりわからない。
「っ……は、」
数分後、静かに唇が離された。透明な糸がランプの灯りに照らされて怪しげに光り、惜しむように伸びていく。闇夜に染まりつつある部屋にはお互いの荒い呼吸が木霊していた。
胸を上下に膨らませて呼吸を整えていると、私に覆い被さっていたカミュの身体がゆっくりと離れていく。手首の拘束が緩んだのを感じた私はすかさず腕を動かして拘束を払い、身体を起こした。
「……ちょ、ちょっとカミュ? いきなり、どうしたの?」
距離を取りつつカミュにそう聞くと、やっと見えた彼の顔が赤い事に気が付いた。
驚いてじっと観察してみると、彼は眉を寄せて苦しそうな表情をしている。肩を上下に動かして呼吸をしている様子は、何かを必死に抑えつけているようにも見える。
赤い顔、荒い呼吸。そして苦しそうな表情。そこから推測すると──もしかして熱でもあるのだろうか。……だとしたら大変だ。すぐにでも寝かせて安静にさせなければならない。
心配になった私は先ほどまでの戸惑いなんて忘れて、彼の頬に手を伸ばす。すると、手を掴まれてしまった。蕩けた青い瞳と視線が合う。
「……お前、あの水に何入れた……?」
「え?」
吐息混じりにそう呟かれた。意味がわからず目を瞬かせていると、カミュはベッドサイドの机を指差してくる。視線を向けるとそこには、先程私が用意していたコップが中身を空にして置いてあった。
ということは、つまり──
「も、もしかしてカミュ、あのお水飲んじゃったの!?」
「……ああ」
「そ、そんなぁ……」
予想していた答えが返ってきたので、がっくりと項垂れてしまった。楽しみにしていたものがちょっと目を離していた隙に無くなってしまったのだ。これを残念と思わず何と思えばいいのだろう。
儚くも散ってしまった自分の野望を惜しんでいると、カミュがムッとした表情でこちらを見つめてくる。
「で、何入れたんだよ」
「う……」
「おい、結香、」
「お、お薬……」
ひょんな好奇心から薬を買った、だなんて言いたくなかったけれど、視線に耐えられず私はすぐに白状してしまった。私の言葉を聞いたカミュの表情が歪む。
「薬ぃ? なんで、またそんなもん」
「や、安かったから買ったの! 城下町にいた商人から! ひ、ひと瓶飲むと綺麗になれるって言うし、試してみたくなって……」
そこまで言うと、大きくため息をつかれた。
恐る恐るカミュに視線をやると頭をガシガシと掻いていて、口元を力ませている。あれは彼の、本当に困っている時の仕草だ。
そんなあからさまな態度を取らなくてもいいじゃない、と一瞬思ったが、カミュもカミュでとばっちりを受けているのだ。単に水を飲んだだけなのにそれには私が買った薬が混ぜられていて、身体の調子がおかしくなってしまった、なんて状況察するにも余りある。原因は私だし文句なんて言えやしない。
「……その、風邪を引いたとかじゃ、ないんだよね?」
「ああ、ついさっき薬を飲むまでは普通だった」
惜しむ気持ちはあれど、カミュの体調と方が心配なので聞いてみる。すると、取り敢えずのところ風邪を引いたわけではないらしかった。それに少し安心をする。
……けど、同時に疑問が浮び上がる。一体何故、カミュの体調がおかしくなってしまったのだろう。薬を飲んだと言うが、あれは「綺麗になれる」が売り文句となっていた筈だ。そんなものに、カミュの様子をここまで崩す程に人体に大きく影響を及ぼすものが入っていたのだろうか?
実際、思い返すと実際安い薬だったし売ってくれた商人も胡散臭かった。変な物が入っている可能性は勿論のこと、毒が入っている可能性も捨てきれない。
考えていくと底無しの沼にずぶずぶと落ちていくような心地がする。とにかく最悪の事態も考えておかないといけない。一先ずは毒消し草を飲ませてあげて、それでもダメだったら万能薬を飲ませて、お医者さんに診せて……。
自分のしてしまったことの大きさに震えながらそんなことを必死に考えていると、私の手を握る手に力が込められた。気を逸らしていた私はカミュの方へと視線を向けなおす。
いつになく静かな青い瞳がそこにはあった。
「……言いにくいんだけどよ。これ、媚薬なんじゃねえか」
「媚薬? わっ、」
カミュは抑揚の無い声でそう言ってきた。聞き慣れない単語に反応を濁すと、掴んだ手を強く引かれて引き寄せられてしまう。
先ほどあんなに必死に距離を取った筈なのに、気を抜いていた私の身体はあっけなく動いてしまった。半ばカミュの膝に乗って向かい合う体勢になる。
突然感じた温もりに驚いて離れようとするも、既に腰と背に腕が回されていて逃げられない。それどころかぎゅう、と音を立てるように抱きしめられ、身体同士が密着する。
「あれを飲んでから身体、馬鹿みたいに熱ぃし。……オレの、ガチガチに勃っちまってる」
「っ……ぁ、」
耳元で囁かれた後、腹部に硬いものが当たっている感触を感じた。ゴリ、ゴリ、と縋るように押し付けられているそれが何なのか、わからない程鈍くは無い。
媚薬ってつまりそういうことだ。彼が飲んだ薬には催淫効果があって、彼は私に性的な興奮を覚えているのだ。
耳のすぐ近くで荒く低い呼吸音が聞こえてくる。熱い息が掛かって、擽ったい。密着する身体からカミュの存在が嫌という程に伝わってきて自然と行為を想像してしまい、思わず身体がぶるりと震えた。彼の様子に感化されたのか私の身体ももの凄く熱くなっていて、熱を含んだ吐息が唇から零れてしまう。
「か、カミュ……あの、」
こんな状況どうすれば、と思った私はカミュの表情に目を向けて様子を窺う。すると視界に入った彼の表情は欲情に染まりきっていて、これはまずいと直感で感じた。
「結香、」
カミュは目が合った途端、顔を近付けてきた。私はすんでのところで彼の口を手で押さえて、行為への突入を何とか防ぐ。キスを邪魔されたカミュは抗議するように眉を寄せて、私を見つめてきた。
ここで彼を受け止めてしまったら、恐らく朝までコースだ。そんなの絶対身体がもたない。……例えすることになっても、先にお薬を飲ませないとどうしようもない。
「ね、カミュ、ちょっと待って。一先ずお薬を飲んで……ひゃあっ!?」
カミュが苦しいのは重々承知しているが、どうにか落ち着いてもらおうと説得を試みる。けれど、力のあるカミュにとっては私の抵抗なんて無いにも等しくて、もう一度押し倒されてベッドに戻ってしまった。
左手首を掴まれて、右手で優しく頬を撫でられる。真上にいる彼は獲物を前にした獣のように、私を射抜いていた。……全身が危険を感じて粟立っている。早くここから逃げろと本能が叫んでいる。
「カミュ、ねえダメっ、待って……」
「わりぃ、もう、待てそうにねえ」
私は拘束されていない右手でカミュの身体を押して、必死に身体を捩った。
けれどもう手遅れで。カミュは静かにそう呟いた後、私に顔を近づけて来る──
──唇が、触れ合った。
「く、ふ……ん、んっ……」
今度のキスは最初から深いものだった。舌を捩じ込まれて貪るように絡め取られる。ぢゅっ、と音を立てて吸われた後は上顎と歯茎をぞろり、と舐められた。擽ったい感覚に身体を跳ねさせると、身体が少し浮いた隙に頭と背の後ろに手が回されて、私達の距離が縮んでしまう。
絶え間ないキスのせいで息継ぎなんて本当に一瞬しか出来なくて、カミュのキスに翻弄されていく私は徐々に思考がぼやけて力が抜けていってしまう。口腔の隅々まで貪り尽くされる様子は、正に「犯される」という言葉がお似合いだろう。
「ん……んぅ、 んん……んっ!」
長いキスの最中、カミュはいやらしい手つきで私の身体を弄り始め、器用にも衣服を剥いでいった。キスに意識を取られている私はそれを防ぐことなんてできなくて、呆気なく下着一枚の状態にされてしまう。せめてもの抵抗で彼の胸に手を置いたけど、本当に置くだけだった。押し返すことなんて出来なかった。
ひんやりとした空気が肌を包んでいるのを頭の片隅で感じていると、カミュは腰をするすると撫であげて胸に手を這わせてくる。ぞわぞわとした感触が身体中に走って、くぐもった声が出てしまう。
「カミュ、ぅ、ん、んん……んッ!」
キスは止まず、カミュは私の胸を揉みしだいてくる。いつもより力の篭った彼の手が私の乳房をむにむにと円を描くように弄んでいて、同時に人差し指で弱い尖端をくりくりと刺激して来た。
すれば、弱い電流みたいなものが走って身体がピクン、と跳ねる。続けてカミュは手の動きを変えて敏感なそこばかりを刺激して来て、遂にはきゅう、と強い力で私の乳首を引っ張った。そうすると、私の身体はまるで魚のようにビクビクと動いてしまう。
普段はもっとゆっくり段階を踏んでくるのに、媚薬のせいだろうか、今日はなんだか急ぎ気味だ。
「ぁ、は、まってそこ、は……あぁっ!」
伝わってくる快感に震えながらそんなことを考えていると、カミュは下着へと手を伸ばして来た。咄嗟に脚を閉じようとするが、膝を割り込まれてしまい侵入を許してしまう。
カミュの指が秘部に触れると、くちゅ、と小さく水音が鳴った。そのぬるりとした感触と濡れている事実に驚いていると、彼は指先を割れ目に添わせて一番敏感な核をぐりぐりと刺激し始める。
「んっ! カミュっ、ぅ、はんっ、んっ、ん!!」