CP小説
□サクラ
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表の通りをサクラが埋め尽くした。
朝起きれば、窓から見える光景は一面のピンク。
サクラって花粉飛ぶのか…?なんて考えていたら急に突風が吹いて俺は何故か意識を飛ばした。
誰かに呼ばれた気がして不意に目を開けると、先程まで居た親しんだ部屋の中ではなく、満開のサクラの木の下に立っていた。
隣には、俺の名前をよんだであろう愛しい人の姿。
「万事屋…なんでここに‥?」
先程まで存在しなかった俺に大層驚いた様子で、目を見開いていた。
「多串クンこそ。」
つられたように俺も聞き返した。
風に飛ばされてきましたー…なんて、思春期の現実逃避するロマンチストじゃあるまいし。口が裂けても言えなかった。
「まぁいい。ちょっと付き合えよ。」
彼はそれだけ言うと、くるりと踵を返し歩きだした。
俺はそれを追うように後ろを歩く。
少し歩くと大通りから抜けた小高い丘の上にでる。
人通りの少ないここも、サクラに侵食され淡い色に染まっていた。
「サクラの木の下には死体が埋まってるんだってな。だからピンクなんだって聞いた。」
サクラの花を見上げながら、あまりにも唐突な事を言うものだから返答に困ってしまった。
(こんなキレイなサクラをみながら死体の話ですか。とんだリアリストだね。)
とりあえずツッコミは心の中にとどめておくことにした。
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