CP小説
□good medicine -良薬-
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「だって俺、未練たらたらやもん。」
困った顔でそこまで言うと、俺を捉えていた瞳は空中を斬り窓の外へと移された。
「見たい映画、まだ見てへんし。‥‥もっと、皆とテニス‥したかった。やりたい事、いっぱいあんのに‥‥」
忍足の身体が小刻みに震えている。
俺は座っていたパイプ椅子から立ち上がり、忍足の肩を抱いた。
一緒にテニスをしていた頃よりもソレは一回り程小さく思えた。
「忍足‥‥」
レンズ越しに溢れ出す涙を指で拭う。
ポタポタと流れ落ちて服のあちらこちらに染みを作っていった。
「俺‥‥まだ跡部に伝えてへんのに‥‥っ‥‥言いたい事いっぱいあんのに‥‥。」
酌量上げる自身を必死に押さえて言葉を紡いでいる。
それがとても痛々しく見えて仕方なかった。
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