FE小説
□財布の中身は空腹に
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デインを裏切る形になった
後悔はない…とは言えないがラグズのために戦えるのが少し救われた気持ちになっている
複雑な心境だが…アイク将軍はデインをも救おうとしてくれているしまだ平気な方だろう
問題は…
「ふう…」
割り振られたテントの机で財布の中身を見ていると溜め息をついてしまう
急遽、戦争の中でこちら側に回ったから手持ちが少ないが…
自分の食事、戦いには困らない程度にはある
そう、自分に困らない程度には…である
「………」
…彼女の腹に入ったら間違いなく自分も空腹で倒れる事になるだろう
「しかし、彼女へのお礼となると…」
今のこの場所は自分の信念のような物に正直に生きられる場所…
そんな場所にいられるようにしてくれたのは彼女…イレースのおかげだ
こういう場合は何か礼をすべきなのだろうが…
「食事、だよな…」
正直に言うと彼女の頭の中は空腹を満たす事で一杯だ
プレゼントで彼女の気をひこうとして挫折した男を沢山見ている
…普通なら女性にお礼のために食事に誘うくらい良い事かもしれないが彼女の食事の量は…
中途半端な心構えで彼女を食事に誘えばこっちが破綻しかけない
「困ったな…」
グレイル傭兵団の有名なナンパ人…ガトリーという人物も食事以外の物で気をひこうとしたが無理だったみたいだし…
「…外で散歩でもして気分を変えるか」
考えていてもまったく思いつかないのでテントを出て歩き回る事に
すでに太陽も沈み、外は闇に包まれているが夜風が気持ち良い
「…ん?」
テントから出て少し歩くと踏み慣れない何かを踏んだ
柔らかいような堅い感触…
暗くてよく見えないが人の形をしている事だけは判断できた
…まてよ、こんな所で死体以外に倒れている人物といえば…
「…やっぱり君か。起きられるかい?」
「…無理かもしれません」
「またお腹が空いているのか?」
「…はい。とっても…」
やれやれと溜め息をつくツイハーク
が、何故か溜め息と同時に笑顔も出る
「相変わらず可愛いな、君は」
「はい、お腹空いてますから…」
前の戦争の時に話した事を覚えているなんてイレースにしては珍しい事だろう
可愛い=お腹空いているのか?と笑って言ってあげたのだ
「…あまり手持ちがないが食事を奢ろうか?」
「本当ですか…!?」
「…四人前、までだぞ?」
結構財布の事情からしてみればキツイ条件を出したが…
一応お礼というのもあるし前回よりも少しは多い量を食べさせたたいと無駄な意地を出してしまったのだ
「食事…楽しみ…」
「…念を押しておくが四人前だぞ?」
「ふふふ…」
今にもヨダレが出るんじゃないかと思うほど幸せそうにしているイレース
…俺はこの軍に来て生きてられるのだろうか
「行きましょう、ツイハークさん…!」
「わかったから引っ張らないでくれ…」
先程までは動けない、と言っていたのに今はもう元気に歩きだす
「…キミと一緒にいると本当に飽きないな」
最近はラグズの味方をしようか故郷のために戦おうか悩んでいて心に余裕がなかったが…
彼女のおかけで本当に楽になれた
「我慢、だな」
少しくらいは空腹を我慢しようと彼女のために笑って結論を出した
…まぁすぐにまた彼女はお腹を空かすかもしれないが
→あとがき