FE小説

□彼女の手料理A
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「う…どうかな?」

「…ちょっと濃いかな?
でも最初の頃に比べれば良い比率になってると思うよ」



ミストが本格的な高級料理店に出そうなスパゲティを作っている

料理の得意なオレの兄貴もそこまでは流石に上手じゃないので兄貴とミストは二人で一生懸命に料理を創意工夫しているらしい

今はスパゲティにかけるミートソースを作っているみたいだが…

料理のできないオレには何の比率か分からない



「…あ!どうしたのボーレ?」

「…別に。何か頑張ってんなと思って」



五分くらい前から厨房を覗いていたりしたがミストはようやく気がついたようだ

それだけ集中して作ってるという事だろう



「うん!頑張ってるんだから邪魔しないでよ!」

「…おう」



好きな女の子にそんな事を言われるとオレは軽く傷心になるがミストは気づく気配はない

しかもすぐに料理に再開し、もうオレなんか目に映ってない

…どうせこの料理も大好きなお兄ちゃんのアイクのためなんだろーよ

仕方なく厨房を後にしてコップに水を入れてテーブルにつきぼーっとする

どのみち夕食まで時間もそうないしヒマなのだ



「…あ!ボーレ!」

「…ん?」



ぼーっとしてるだけでいつの間にか10分ほど時が過ぎていた

しかも水もまったく手につけてない



「スパゲティが良い感じにできたんだけど…食べてくれない?
一番最初にボーレに食べてもらいたいの」

「ま、マジか!?」



好きな女の子にそんな事を言われて嬉しくないはずがない

早速ミストが料理してくれたスパゲティにフォークで突き、口に運ぶ



「う、うめぇ!本当に高級料理店のスパゲティみたいだ!」

「ホント?良かったぁ…」



嬉しそうに微笑むミストの姿も見れてオレの気分はかなり上々

頬が溶けて落ちてしまいそうだ

いや、目の前の天使の微笑みにオレの心は堕ちてしまうかもしれない



「ありがとね、ボーレ。味見してくれて」

「別に礼を言われる事じゃ………味見?」

「うん。私とオスカーさん味見のしすぎで口の中がヒリヒリしてきちゃって…」



…味見。そうか味見か

つまり例によっていつも通り…



「…晩飯はそろそろできたか?」

「あ!お兄ちゃん!」



しかもタイミング計ったかのようにアイツまでやってきた

確かにもう夕飯の時間だ



「今日は肉じゃないのか?」

「もぅお兄ちゃんったら肉ばっかり。
コレでもお兄ちゃんのために頑張って作ったんだよ?」

「そうか」



ですよねー

何か近頃定番になってきてる気がするよ

てか、アイクを喜ばすなら肉料理だろ?

まぁ腹に入ったら全部同じみたいなヤツだからコイツを喜ばすために料理なんて意外と難易度高いんじゃないか?



「…美味いな。ミストの料理なら肉じゃなくても美味しく味わえる」

「ホント!?」



…って!アイクのヤツが珍しく肉意外で喜んでるよ!

ミストも凄く喜んでオレに見せたのとは比べ物にならないほど良い笑顔をしてるし!



「ちくしょう、覚えてやがれ!」

「ボーレ?」



唐突に席を立って大声を出したオレの名前を呼ぶ兄妹の声は完璧にハモっていた

本当に仲良しな兄妹だな!



「どうしたんだアイツは」

「さぁ…?」



オレの恋はまだ届かない








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