『あ、雨…………』
そう思ったときはもうすでに私は水滴に包まれていた。
レイニーレイニー
教団の外でぼーっと立っていたら突然降り出した雨。激しいわけではなくむしろ粒の細い優しい雨だった。だから気付かなかったんだと思う、私がもう濡れていたことに。
優しく降られてなんだか心地よかったからもう少しぼんやりしていくことにした。
灰色に染まった厚い雲を見上げて流れる雨に身を任せた。
しばらくすると、バシャバシャと水のはねる音と少し荒々しい声が聞こえる。
「オイ…!なにやってんだよ!?」
『ユウ……』
水溜まりを弾きながら走ってくるユウの顔は驚きと呆れが半々ぐらいだろうか。ずぶ濡れの私が言うのもあれだけど、濡れちゃうのに…
「こんなとこでなにやってんだ?」
『雨が気持ちよかったの』
「……馬鹿か」
『うるさい、いーの』
驚きと呆れの割合が崩れて呆れだけになった。そりゃ、無意味だし無考えな行動だけど…
『ユウ風邪引いちゃうよ?もうなかに入った方がいいよ』
「だったらお前も入れよ」
『私はいーの』
呆れ顔度が120%を越えたようです。この後はユウ怒り始めるかな。心配してくれてるのは素直に嬉しい。けど、申し訳ないが今はこうして雨にうたれていたい。
「チッ…たまには言うこと聞きやがれ」
『う…ごめん……』
「たく、しょうがねぇな」
『あ、うぇっ』
ユウは溜め息一つ私に落として、少し強引に私の腕を引っ張り自分の胸の中に収めた。予想にしてなかった行動に私は抵抗するまもなく彼に抱かれる形になる。
「……体、壊したら困るだろうが」
『…うん、ありがと……』
雨に当たりたかったからこれでは意味ないんだけど、という言葉は言わないでおこう。雨の代わりにユウが包んでくれたし。
『ふふっ』
「何笑ってんだよ」
冷えた体にユウの熱が暖かくて私も腕をまわして抱きしめ返す。自分から抱きしめたくせに真っ赤になったユウに気付かないふりをして、その胸に顔をうずめた。
(冷たく優しい雨はあなたに似てると思う)
ーENDー
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