ショート

□甘い香り
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今日もあなたの部屋を訪れる。




コンコン





「誰だ?」




『…ティキ、』




「入れよ」




名前を言わなくても私だってわかってくれるとか、突然来たのに迷惑がらずに部屋に入れてくれるとか、そんなティキが好き。

けれど扉を開けたと同時にふわりと香る女物の香水の匂い。抱きついたティキの胸の中にも香る化粧品の匂い。

あなたに会うのは嬉しいけど、




(また、女の人といたんだ…)




だからティキと会うのは嫌いなの。ティキの周りはいつも綺麗な女の人ばかりで、艶やかなその人たちは媚びるようにティキに絡みついている。
そんな人たちと比べて私は扱いが違う、と思う。いつも優しく抱き締めてくれるけれど…どこか子供扱い。
ティキがその人たちと本気で付き合っているわけではないのは知っている。でもその場限りでも嫌なものは嫌。
私以外見てほしくない、なんて言えなくて、けれどティキから離れることもやっぱり無理で…




「なにそんな渋い顔してんの?」




他の人の匂いがするから。そんなことは言えないから黙り込んでもう一度ぽふっとティキの胸にうずまる。




「……てか何、香水つけたの?」




その女の人たちの香りを消せるように、私の香りを残せるように香水をつけてきた。あの人たちじゃなくて私の残り香を纏っていてくれたらいいのに。




『いい匂い?』




「……つけすぎ。」




『…ふん』




匂い消して私も残すには普通の量だと駄目だと思ったんだもん。




「ちょっと待ってろ」




むくれる私を置いて、部屋の机の上に何かを取りに行くティキ。じぃっと戻ってくるティキの手の中のものを見つめればすぐになんだかわかる。




『あ!チョコレート』




「ロードが忘れていったやつ」




『おいしそう…』




「これ食ってな」




『ありがとう、でもなんで?』




「香水よりそれの匂いのが合ってる」




それ、とは甘いチョコレート。口の中から広がる甘い匂いに満足そうに口角をあげるティキに対して私は再びむくれる。




『子供扱いばっかり…』




すると、私がそう言うことをわかっていたのか、何故かティキもチョコレートを食べていて。ニンマリと笑いながら近付いてきて静かに私と唇を重ねる。




『ん…っ』




ティキの口内から伝わる甘過ぎるモノ。深く深く浸透していくように広がっていく。




「子供扱いなんてしてないけどな」




『…………』




ティキはずるい。おとなしくなった私の頭を撫でて「いい子、」なんてやっぱり子供扱いなのに。それでも幸せを感じてしまう私はあなたから離れるなんて絶対無理。

















私の頭に置いた手を肩に移動してそのまま自分に引き寄せ額に一つキスを落とすティキ。
「甘くていい匂い」
『………もっと、』
「ん?」
『もっとちょうだい』
「…はいはい、お嬢サマ?」









ーENDー














→あとがき

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