現(ウツツ)の合図

□君と手を繋ぎ
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「…もう暗くなってしまいましたな」


校舎から出ると、辺りは既に闇に包まれていた。
空にはまるい月が、ぽつりと浮かんでいるだけ。


肌寒い空気が、2人の皮膚を刺した。


「冬に近づいてきたからな…日が落ちるのも早くなるか」
「そうでござるか…」



校門から出る。
月明かりと街灯だけが、ふたりを照らす。
無言で帰り道を歩いていく政宗に、幸村がつぶやく。


「…寒くなって参りましたな」
「…………」
「…なぜそのような表情をなさる」


政宗はなぜか驚いたような顔で幸村を見ていた。
普段はあまり見せないような表情に眉をよせる。



「……いや、アンタがそう言うのも珍しいと思ってな」
「珍しい?」
「アンタの身体はいつも温かいから」
「………。」


今度は幸村が驚く番であった。
よく身体に触れると思っていたが、そんな風に感じていたとは。
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