Novel

□ずっと好きでいてください。 …叶
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サァァァア…
カーテンを開けて外を見ると、夕闇には雨が降っていた。

「雷光さん……」

呟いても、1人の部屋には虚しく響くだけだった。
こんな雨の日は、…傷が痛む。

「……っ…」
(雷光さん…)

待っているのに我慢できなくて、家を飛び出した。
少しだけ走ったところで、目立つピンク色が見えてくる。

「雷光さん!」

「俄雨?」

「雷光さん、雷光さん…!」

僕は、雷光さんの姿を見るなり、抱きついた。
雷光さんは、少しビックリしながらも、心配そうに言った。

「俄雨?…どうしたんだい?」

言われたところで、我に返る。

「はっ……す、すすすすみません!僕……」

その瞬間…、僕は雷光さんの腕の中にいた。
雷光さんが、僕を抱きしめていた。

「…痛むのかい?」

僕は無言で、雷光さんの背中をつかんだ。
雨はやんできたが、雷は鳴り続けている。

「さて帰ろうか、俄雨」

優しい声で呼ばれて、ほっとした。
微笑んでくれて、嬉しかった。
迷惑かけて、嫌いにならないでほしいから、僕は…

「馬鹿だね、俄雨」

「……僕は馬鹿、です、ね…」

「……」

雷光さんは、やけに素直な僕を不思議に思ったのか、首をかしげた。

「雷光さんに迷惑かけたり、勝手なことしたり、こんなことばっかしてたら、嫌われるのはあたりま……っ!」

雷光さんは僕に触れるだけのキスをした。

「私がお前を嫌う訳ないだろう」

「で、でも」


「私は、俄雨が好きなんだよ。」


素直に笑みがこぼれた。


ずっと好きでいてください。

「大好きでもいいかい?」

「も、もちろんです!」


END

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