Novel
□想うのはあなただけ …叶
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部屋の中は、暗くて静か。
私は、夕暮れの静寂を楽しんでいた。
「雷光さーん」
ふいに名前を呼ばれた。
目だけで見ると、そこには愛しい俄雨が。
「なんだい俄雨?」
「わぁぁ!いたんですか!」
「おや…、気付かなかったのかい」
気配を消すことは得意だ。
私に気付いたときの、俄雨の反応は、ほんのり頬が赤くて可愛らしい。
私はその表情が大好きで、いつ見ても飽きないのだ。
「なぜ今名前を呼んだんだい?」
「え、そ、それはですね…えーと」
「フフ…どうしてだい?」
「あ、あの!」
ほら、…また。
ああ、なんて愛しい。
そんな顔をされると、襲いたくなってしまうよ。
私はなんて欲がつよいのだろう。
「雷光さん、僕は…」
「僕は?」
「……///」
「(可愛い…)」
私は、ガラスでできたように儚く見える俄雨を、軽く抱きしめた。
「そういえば雷光さん」
「ん?」
「外に彼岸花が、咲いていましたよ!」
「本当かい?見に行こう」
「はいっ」
「やはり、彼岸花は良い」
プチンッ
隣でしゃがんでいる俄雨を見ると、私の喜びを喜んでくれているようだ。
私の顔がほころんだ。
「俄雨、あげるよ」
「僕に…ですか?」
「ああ、花言葉は知っているね?」
「……」
俄雨は、首をかしげている。
私は耳元で、囁いた。
想うのはあなただけ
END