Novel

□トランプゲーム …キコ
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ぱさ。
最後の一枚がトランプの山に落ちる。
「ふふ…これで敗者が決まったね。」
にっこりと笑う今日も素敵なピンク頭の雷光さん。
「…よかった」
ほぅ、と息をつく宵風くん。
「ほら、俺の予想通りだよ。」
指で可愛いらしく狐をつくって微笑む壬晴くん。
そして、三人は声を揃えて言う。
雷光さんはわざとでしょう満面の笑みを浮かべ、僕を見ながら。
宵風くんは帽子で目元が見えないけれども、しっかりとこちらを向いて小さな声で。
壬晴くんは頬を少し赤くして、可愛く、楽しそうに。

「「「罰ゲーム!」」」

「いっ嫌です!」
ぶんぶんと首を振り、僕は必死に拒否する。
なんせ一位はあの雷光さん。なにを罰にするか分からない。
「駄目だよ、俄雨。最初から一位の考えた罰ゲームをビリの子がする約束だっただろう?」
心底嬉しそうに笑いながら雷光さんはおっしゃる。
ちなみに一位は雷光さん、二位が壬晴くん、三位が宵風くんだった。
僕は最後に手元に残ったジョーカーを力無く山に乗せる。
「雷光さん、何にするんです?」
壬晴くんもかなり楽しそうだった。

しばらく二人は部屋の隅でこそこそと話していた。
その間、宵風くんはずっとこちらを見ていたが、ぼそりと僕に言葉をかけてくれた。
「…がんばって。」
小さなガッツポーズ付き。

そんなに頑張らなくちゃいけない罰を受けることになるのでしょうか。

「決めたよ、俄雨!」
生き生きと雷光さんが帰って来ました。
「この紙に書いてあることをお言い。」
雷光さんが四つ折りにした紙を手渡してくれました。
内心の僕はほっとしていました。
-----よかった、何か言うだけで…。
「第二候補は私の選んだ服でデートしてもらう、だったんだけどね。」
びくうッと震えが走った。それは、嫌だ…!いや、雷光さんが選んだ服だったら…!でも嫌だ!
「えー。雷光さんそっちのほうが面白かったと思いますー。」
残念そうな壬晴くん。危なかった…!
「でもほらそれは罰ゲームにならないと思ってね。」
雷光さんやはりあのファッションセンスに自信を持っていらっしゃるんですね…。デートはう、嬉しいですけど…。

かさかさと紙を開き、そこに書かれた文字を読む。
こ、これは…!


「ら、雷光さん…」
雷光さんは何を考えていらっしゃるのでしょう…!こ、これを言わせてどうするのでしょう…。多分、ただの嫌がらせでしょうけど…

三人が僕の方を見つめている。
「もちろん、一位の私を見て言うんだよ?」
トドメの一言。

すー、はー、と深呼吸をする。
頭の中で言葉を繰り返す内に、羞恥で涙が出て来た。
しかし、決意を固め、雷光さんを見る。
そして、小さな声で言葉を紡ぐ。

「お、お兄ちゃん、大好き…。」


部屋が一瞬静かになる。

そして、くっくっく…という壬晴くんの必死に押さえた笑い声が響く。
宵風くんは笑いはしなかったが、肩が物凄く震えていた。下を向いていて表情は見えなかったけれど、かなり楽しそうだ。

雷光さんはこちらを無表情で見ていましたが、口をゆっくりと開いて、おっしゃりました。
「涙目でそんなことを言うと…襲いたくなってしまうよ、俄雨…!」

自分で言わせた癖に!

そして本当に抱き着いてきました。
「愛してる…!俄雨っ!」
嬉しいですけど嬉しいですけど…!なんだか微妙な気分です!
「やっ、やめてください…!」




それを見ていた壬晴は、横に座っている宵風にこしょこしょと耳打ちする。
「ねぇ、宵風、二位の人が三位の人に罰ゲームは駄目かな?」
自分が先ほどの台詞を言うのを想像したのか、じょわッと鳥肌を立てながら答える。
「…いってほしいの…?」
顔色を真っ青にさせる宵風を見て壬晴は笑うと、宵風に抱き着いた。

「こっちでいいよ。」





END

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