Novel,Original

□自由は空に …叶
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だるい。
先生が言ってることなんて、誰一人として聞いていないのに。
本当、よくしゃべる……

窓際の席で、ぼんやりと空を眺める。
次の授業は……げっ、数学……
…だるい。

さぼっちまえ。




授業が終わる合図の鐘とともに、教室を後にする。

今日は晴れ。
…サボるとしたら……屋上だな。






ガチャッ
屋上へと続くドアを開ける。
空が近くて、目を細めると、何かが浮かんでいるのが見えた。

…シャボン玉……?

青い空に、よく似合う。
丸いシャボン玉が、穏やかな風に流れていった。


ドアを閉め、シャボン玉の発信源に向かって、ゆっくりと歩いていく。



すみっこに、淡い栗色の髪の、小柄な少年が左膝をかかえて座っていた。
…1年だろうか。

こちらに気付いたらしく、じっ と見てくる。

「……君も、空を見にきたの?」

澄んだ声。

「サボり」

口下手な俺は、そっけない返事をかえす。

「きれいだよね」

「……」

「空とシャボン玉」


そう言った少年の瞳は、どこか切なげで。


隣り合わせに座り込み、静寂を楽しむ。
それはそれは、穏やかな時間で、なぜか安心できた。

「…夢って、ある?」

沈黙を破り、ポツリと呟くように問うのは、栗色の少年。

夢、か……なら俺は…





「…雲になりたい」






自由で、穏やかで、気まぐれで…風にのって流れていたい。







「そっか、僕は……」




風が、少しだけ強く吹いた。









「シャボン玉になりたい」










栗色の少年が持っていた
シャボン玉は、いつのまにか、からになっていた。









自由は空に。







end...

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