Novel,Original
□アトリエU…叶
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「今日は何を書いてるの」
今日も、君は隣にいる。
外は、気まぐれな風に、穏やかな雲が流れている。
大きすぎない、深緑の瞳でまばたきをして、画用紙を見据える。
「何だと思う」
「またそれ、」
質問に質問を返す。
僕の悪い癖だ。
君は、少し不機嫌そうに、窓際に目をやる。
「また、滲ませるの?」
「そう、」
「好きだね」
「好きだよ」
幻想的な滲みが好き。
上手いとか下手とかじゃなくて、ただ、綺麗だから。
滲みは、いつも君を思い浮べて描く。
淡い色で、派手にならないように。
もちろん風景とかも描くが、君が隣にいるときは、滲ませるのが多い。
「ねぇ、」
「ん」
「僕のこと描いてよ」
「……」
分かっているくせに。
この滲みが、
君だってこと。
僕は君を見つめて、君は僕を見つめて、薄く笑った。
end...