□知らなければ良かった
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「…っはぁ…はぁ…!!!」


い、き、くるしっ…!
久しぶりに全力で走った気がする


……でも、
心はもっと苦しいよ…!!!





――事は数分前、お昼放課中のクラスの子のある言葉が原因



「なー!ダメツナってまだ笹川の事好きなの?」


「…な!!?」


「!!!」


ふざけていたクラスの男の子達が、大声で言ったんだ

私が…目を逸らしていた現実を…


沢田君が笹川さんを好きなのは知ってた
だって一年生の時、噂になってたから

一年生ではクラスは違えど、あんなに噂になったんだからいやでも記憶に残ってて

最近まで忘れかけてたんだけど、沢田君を好きだと自覚してから思い出したんだ


でも、私は勝手に思い込んでた
流石にもう笹川さんを諦めただろうって
だって笹川さんにはフラれたって聞いたし…



だけどそれは間違いみたいで、


私は右隣の席だから、ばっちり見えちゃったんだ

そ、そんな事…!!なんて否定してる沢田君の耳が、真っ赤だったのを


ただこんなに大勢いる中で、大声で言われたから恥ずかしくて赤くなっただけかも知れない

でも私は瞬時に違うと思った
これは女の勘

沢田君は、まだ笹川さんの事を…



そう感じた瞬間、私はここに、沢田君の隣に居たくなくなって、もうすぐ授業が始まるにも拘わらず鞄を持って教室を飛び出した




行く宛なんかなかったのに、何処かに足が自然に向かう

数分後、着いたのは日曜日に沢田君を見かけた公園だった



近くの遊具に座って、思いっきり泣く


「…ふ、ぅあ、っ…」


とめどなく流れる涙は地面を変色させていく

なんで沢田君を好きになっちゃったんだろう
やっぱり恋って大変だね
涙を拭う事もうっとおしくなって、私はただ変色していく地面を見続けた




【知らなければ良かった】




(…ぐす、もう真っ暗…何時間ここに居たんだ私)
(……帰ろ)




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