MONO MOLTOR 第七番目のLogos

□第2章:第七LogosとAltoalno
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かつて世界には、大地と大樹、大空と大海とが手を取り合った、大いなる調和があった。
しかし大樹は今、真理という最完全に心奪われ、更なる高みを目指して茂りを繁栄させてゆくばかり。
調和の乱れ。これによって命を落としてゆくは大樹の低い枝と、破壊者達であった。 

全てが正しく世界の運命、来るべき星の寿命なのかもしれない。 
大地は自らの刻を悟りながらも、ただ生きていることの喜びを唄い、大樹を説得し続けた。
時を刻む星砂は戻れないという、
ありふれた真理を ――――

しかし大樹はそれを拒絶し、理解出来ぬふりで受け入れないのであった。
そう大樹は、己の肥大を制御できなくなってしまったのだ。
断固己の理想に導かれんとする6つの大樹は、ありふれすぎる真理を認められない。
大地、大空、大海には、全くそれが何故だか解らぬ。

大地と大樹とは生命の対である。
大地は自らの為に大樹を守るべく、ついにその枝を何本か折ってやる事にした。
穏やかだった破壊者の唄は、いつしか恐ろしい天災の轟となり、創造者の大事な枝を、葉を、散らしていった。
創造者達は愛するものを奪われ、探究を邪魔する破壊者達を恨んだ。
創造が破壊から逃げてゆく。しかし破壊者を呼び寄せているのは、
いつも創造者の側である事に、
さぁ、誰が一番初めに気づくだろう……。

創造者が逃げ抗い続ける限り、破壊者は呼ばれてしまうのだ。
創造者の何故?に、引き寄せられるのだ。
それを受け身にして、創造者はまた逃げ抗うのだ。
時には武器を取るが、常に破壊者は創造者の鏡であった。
回り続ける2つの論争。繋がれた小さな手と手を軸に。

★  ★  ★

時の系譜 混沌の蒼空 濁った草の音 6種のLogosの不協和音 ―――

帝都アビラの人里より辺境の地に、魔の住処と恐れられる古い森があった。
その闇に置き捨てられた幼子、アルトアルノは、森に呑まれ、第2の生を受けた。
暖かな大地の両腕より育まれた少女は、人の力、6種のどのLogos(学術的知)にも恵まれなかった。

それ故の必然か、幸か不幸か、少女は森の暗がりの奥に、
無限にも見える歪な一本道を見たのだった。

長い時を経て成人となった彼女は、自らを支配する衝動より故郷の森を旅立つ。
6つのLogosの唄が耳を劈く世界。
アルトアルノは黒い若木の竪琴を高らかに掲げ、
創造者の誰もが知り得ない、第七番目のLogosを唄い始める。


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