MONO MOLTOR 第七番目のLogos

□第6章:六つのLogosとMichemasenol
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大樹の枝葉は、触れたものの構造を自由に操作出来るまでとなっていた。
大樹は自らに取り込む、大地のありふれた素材に一つ手を加える事で、更なる成長を可能にした。
食材を美味にし、家畜を量産し、花の色を様々にし、その改変の波は、大地に歪な波紋を広げていった。
大樹の肥大した体は、もう大地のありふれて限られた素材では、保つのに間に合わなかったからだ。

肥えた体は多くの養分を必要とする。
大地の蓄えは次から次へと、大樹の根に吸い上げられていった。
大樹はより大樹となり、多くの実を地に降らせたが、その歪な色の実は、大地を病気にしてしまった。
天の方にしか目の付いていない大樹は、それに気付かぬ。
一向に落とされる実は、どれもこれも毒入りだった。

大樹の改変は、大地と共に吸い上げる毒を体の中で識別、分別し、自らに栄養のみを与える能力を与えた。
すると毒の行き場は実の方へと流れ、本意にも、
不本意にも、大樹は毒の実しか生み出せなくなっていた。
幾多の毒を飲み、大地の口は捻り曲がって、上手く唄を歌えなくなってしまった。

大なり小なり毒に馴染んでしまった大地の体。
大地の片腕は、大海と繋がっている。故に大海は大地によって、毒を受けてゆく。
大海の片腕は、大空と繋がっている。故に大空は大海によって、毒を受けてゆく。
大空の片腕は、大樹と繋がっている。故に大樹は大空から降りしきる毒に、疑問の葉を生んだ。
大樹の片腕は、大地と繋がっている。
故に大地は大樹から、更なる毒を身に受けていった。

大樹は自らの解毒に追われながら、毒まみれの彼らに問うた。
「何故大地は、私に毒を盛るのか」
「何故大海は、私の元へ毒を運ぶのか」
「何故大空は、私に毒を浴びせるのか」
こうして、大樹はやっと彼らに視線を流したが、
返事に耳を澄ませても、何のことやら理解出来ぬ。
歪んだ彼らの口から発せられる音は、もはや聞きとる事の容易ではない、
理解不能な響きとなっていたから。

改変という名のたった一手間によって、1が10となる100となる。
大樹は素晴らしい道具を手に入れたのだ。
大樹の発想は止まらぬ。
改変の興味は、ついに自身の構造にまで及び、その手を加え始める。

大樹は、成長点により優秀な創造者を創造し置く事で、成長の促進を図った。
自らの歴史を漁り、呼び集め、歴代の素晴らしい創造者達の名を、
大樹の先端へと召還する。
そして全ての名を合わせ混ぜ、形の良い葉に組み込む事により、それは誕生したのだった。

第四Logosの大樹、その先端に光り輝く2枚の葉が生まれた。大樹の持ち得る全てが注ぎ込まれたそれは、
あまりにも美しく、眩しく、強い光を放ち、他の木に光合成としてより養分を与え、成長を促す力を持つ。
すべての木がその葉に導かれ、成長を異常に早めてゆく。
天へ、天へ、真理という大天へ。
その名付けられた、光り輝く2枚葉の名は、

Michemasenol

Murremurray

創造者の誰もが知る、人類初の、親無し人。

大地と大海と天空は、大樹の枝を折るのと同様に、ただ、その2枚葉にも手を伸ばすのだった。

これがMONO MOLTORの全容である。


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