MONO MOLTOR 第七番目のLogos

□第7章:創造者と破壊者と大地
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商人キャラバンに運ばれて、工都Seonenaへと向かう破壊の唄。
もうどれくらい揺られたのだろう、鉄格子から覗く月は、あんなに高い……。

「その荷馬車よ、止まりなさい」
先の工都の下りから、荷馬車の進路を阻む者。
2頭の馬がヒヒン!と嘶き、手綱を持つ手が一瞬狂う。
「闇商人、あなたは自らの故郷に、災厄さえも持ち込もうというのか!」
「 ……?! いいえ……! …… 」
月に拭われその人影は、誰もが良く知るミシマセノル。
闇商人には理解できぬが、彼の言う事とにかく正しい。
荷台の鍵を開けるなり、男は闇夜に消えて行く。
「ヘーイ! この辺で自由になれるって信じてたんだ〜! ヒャッホー! ……ン?」

★  ★  ★

目と目が合ったその瞬間、互いが互いを確信す。
空が大地が大海が、ざわめき鼓動し逆巻き唄う。

【 彼を負かせよ破壊者よ それがお前の役割だ! 】

「 このような日が来る事は、解っていた。
何故なら創造者は、破壊者を敵視し、その道に立ち塞がるから 」

「 私の行く道に立ち塞がっているのは、貴女です。
Logosによって私を遮るなど、その愚かさを知るがいい 」

創造者(人)と破壊者(大地)の円舞曲。世界の鼓脈が加速する。
君よ君よ、忘れてやしないか、
大地という生き物の上で、生きていること ―――

「Ideaの小道は自滅への道。「過ぎたる者」への断頭台。
君よ大樹よ生きたいのなら、それは間近だ、引き返しなさい」

「自滅であるならば何故、貴女は生きて、自滅を語るか。
Ideaの最果ては安全。貴女は自分で今そう示した」

東より来たる天災、西より来たる賢者、創造者(あなた)と破壊者(わたし)の円舞曲。
君よ君よ、忘れてやしないか、
大地という生き物の上で、生きていること ―――

「貴女のLogosは大樹に無い、人が使えぬ不要のもの。Logosは人の道具である。
実用無ければ、使えもしない。そもそも誰にも見えていない。
故に無いのと同じであり、 ……よって第七Logosは無力に消える!!!」

「Logosは人の道具である。第七Logosもそうである。
故に私は人間で、それを用いてここにいる。
錯覚好きの盲目よ、さぁ! 人が使えぬ、そう言うのなら、
……私が人ではないと証明せよ!!!」

「幾多の災害を起こし、数奇な現象を生む貴女のそれは、人の業ではない! 
人なら天災を呼び操れぬ!」

「ならば人は天災の到来を止める事もできぬ! 私の破壊の旋律は今、第七Logosと大地を砕かんとする君の論理に抵抗するべく、
工都より確かに逸れた。天災を食い止めている、お前も人ではない!」

突如彼のその蒼眼に、Ideaの道が映りこむ。
塞がる破壊者、にやりと身を引き、その奥一瞬見えたもの、
それは―――!

「ああぁ!!」

錯乱する自分を大地に擦り付け、ミシマセノルは内より来たる激しい衝動に悶え苦しんだ。
それを見下ろす破壊の唄、進路を変えて、去ってゆく。

「 君が生きていたら、その名と、反省の言葉でも聞いてやろう 」

破壊の唄は、地を這う天才によって、工都を逸れて次の国、Dashbaaleへと向かっていった  ―――

★  ★  ★

「ヘーイ! オ、オレ……どのタイミングで帰ればよかった?」



 

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