MONO MOLTOR 第七番目のLogos

□第8章:軍都Dashbaaleと騎士Trail
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Logos栄える六大国家、軍都Dashbaaleはその第五Logosの恩恵を受けし国だった。

第四Logos修める工都Seonenaとの連盟、鋼とグタペルカの眼差し、
休まれぬ有機機関の排気塔からは、絶えず暗雲が快晴に放たれている。

ミシマセノルの事前の電報により、彼らは天災の到来を知っていた。
彼女が国を一望出来る断崖に立つと、既に多くの騎士達が自分を一望していた。

第六Logosの市都Cellcaの加勢を加え、総勢を指揮するはDashbaaleの勇将、
トレイル・ガルダロフ。
彼らに第七Logosに対抗するLogosを戦略として授けたるは、
工都の天才ミシマセノルとマーレマーレ。

創造者達を眺むアルトアルノは独り、風の音を聞いていた。
先の戦いで消耗したのか、
若木のハープは少々撓って、今にも壊れてしまいそう……

「大いなる大樹よ、貴方達は毒を含んだ実を地に落とした故、
大地はその毒を樹の根幹へと運ぶだろう……」

破壊者と創造者の戦いは、世界の全てが観客である、大地という広大な舞台の上で、
今宵も幕を開けるのだった …………

★  ★  ★

「 私は……見ました。
神殿の、Ideaの道の最果てを……。その先にあったものを …… 」

おお! 私達のミシマセノルがついに真理を見たという! 皆の者集い聞こうぞ!
さぁ真理とは如何なるものかを! おお ミシマセノルよ!

「 そこにあったものは箱でした。蓋を開けると中は空で、
底敷きに文字が書いてあるだけでした。
それは優しい字で、こう記されていました 」

 あなたが すべきで ない ことは なんだろう 

「 私は……見ました。神殿の、Ideaの道の果てを……。
その先にあったものは、六つの神殿のIdeaの道が、
神になど繋がらぬ偽物であるという、事実でした…… 」

ああ! なんと私達のミシマセノルは狂ってしまった! そんなものは断じて真理ではない!
皆の者彼を精神病院へ! ああ ミシマセノルよ!

「 皆、何故信じてくれない、否、認めないのです……。
いけない……! これでは何という誤報を送ってしまったのだろう! Dashbaaleは彼女と戦う……、
行かなくては……! あの破壊の唄は、抗ってはならない受け入れなければ……、
止まらないのだ……! 」

★  ★  ★

アルトアルノが空を仰ぐと、突如Dashbaaleに雨が降り始めた。
それは排気塔から発するものをよく含んだ恵。
強酸が豪雨となって降り注ぐ。

あちこちで白い煙が上がり、それは水に乗って再び頬へ。まるで大空に帰すのを嫌う様。
大樹が溶ける音も人の叫びも、観客の胸には届かない。

工都のLogosを駆使する者は巧みに雨を凌ぐ。彼女の元へ駆け急ぐミシマセノル、そして、
騎士の中で唯一Logosを剣とす、騎士長トレイル。

Logosの騎士と破壊者の女。何も解らぬ幼子と賢明なる老者は、爽やかな雨に濡れ、
歪な天を見上げていた。全てが破壊の唄に呑まれ、消えてゆくのを ……

ああ、騎士達の中で彼女に辿り着くは唯一トレイルのみ。
差し向けられた銀の刃先が、アルトアルノを断崖の端へと追い詰めて行く。

「勇敢な騎士よ、私の父よ。
貴方なら私を理解できると信じておりました、が、どうにも分かり合えぬ様ですね」

「黙れ魔女め! 私は貴様など知らぬ! 私の娘は生まれて間も無く死んだのだ!! 
これ以上我々を惑わし、地上の平和を乱す事は許さぬ!!」

「創造者よ、私の父よ、何故ですか。
……何故、再会の言葉に、さようならを、選ばなくてはならないのか」

じりじりと一歩、また一歩、迫る刃に崖の方へ退きながら、
アルトアルノはその騎士の男を真っ直ぐに見詰めた。

「……Logosの騎士よ、勘違いするな、追い詰められているのは貴方だ。
私が死ねば、この酸はすぐに貴方と、ここにいる全て、誰もの身を侵すだろう。
この量を身に受ければ、軽傷では済むまい。しかし、私が今から貴方に尋ねる事に対し、
貴方が私を見事納得させる事ができたら、私が死ぬ時、この雨は速やかに上がるだろう」

「それは本当だな、魔女! よい、その問い、私のLogosの刃で受けて立つ!!」

「……何故。何故、貴方は一度その腕で私を抱いてくれたのに、名前をくれなかったのか。 
何故、貴方は私を、生まれた瞬間に絶望し、その未来を信じてもくれなかったのか、
――――ああ父よ!! 
子である私を納得させてくれ! 子である私に、
何故親が子を捨てるに至るのかを、納得させてくれ!!!」

「…………。なるほど我が娘の亡霊よ。私を恨み、復讐しに来たのだな。
その理由を聞きたいのか、それはな、お前が悪いのだ。私達が最善を尽くしたにも関わらず、
女に生まれたお前が。私は男の子が欲しかったのだ」

振り上げられる刃に、アルトアルノは眼を見開いた。

雨音が黒雲を降り呼び唄い、大地が唸る。
ミシマセノルはひたすら、地平線の向こうの惨状に向かい走っていた。
その頭上を颯爽と追い越す一陣の影。

「 へッヘーイ!! お困りかナ!? 第七Logosの、新しい探求者さん!!! ヘイ!! 」

★  ★  ★

鷹の民に導かれ、戦禍の惨状見下ろせば、幾多が溶けて混ざり合う、歪な国跡足元に、
切り立つ断崖、2つの人影。
苦しみ溶け逝く騎士の背中と、赤に染まった緑衣の女。
ミシマセノルは地に降り駆ける、ぬかるむ大地を蹴り手を伸ばす、

今まさに 断崖へと傾き落ちる 破壊者へ ―――― !

破壊者と創造者の戦いは、世界の全てが観客である、大地という広大な舞台の上で、
星を抉りながら繰り返されるのだった …………

★  ★  ★


 

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