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□かぶとむし
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甘い匂いに

誘われた私は






■かぶとむし■



貴方は私よりも一回りも年上で。

時々、貴方が明日死んでしまわないかと不安になる。


目を覚ましたら貴方は居なくて、代わりに貴方の甘い匂いだけがそこにはあって。


怖くて、恐くてたまらない。


それなら一層、目を覚まさなければいい。ずっと貴方がいる夢の中にいたいから。


「…ぇ、妙。」

「ん…」

そこには銀時がいた。

「こわい夢でもみた?」

そう言われ、目尻に残る涙の跡に気づく。

「…あたし、泣いてた?」

「うん。」

銀時に腕に抱かれながら、妙はそれを拭きとった。

「新八からツッコミと眼鏡がなくなる夢でも見たか?」

「やだわ、弟を殺さないでちょうだい。」

いつものように笑う銀時に妙は安堵した。

「んじゃ、おやすみ。」

しかしその言葉で再び不安が蘇ってくる。

「嫌。」

不意に妙はそう言い放った。

夢の中に貴方は居ないかも知れない。
それが何よりも怖かった。

「もう少し…話そう?」

「なんだ、怖くてねれねぇんだろお前。」
そう、怖い。
だからお願い。

「んな、悲しそうな顔すんな。分かったから。」

ぎゅっと抱きしめてくる銀時がいつも以上に温かく感じた。

「銀さん、」

妙は銀時の唇を自分の唇へと誘う。
銀時もそれに乗じて妙の柔らかな唇に触れた。

「ぎん…さ…。」

銀時はその唇を甘く咬み、さらに深いものへとしていく。

「妙。」

少し癖のある低い声と、襟足から香る甘い匂いに妙はひどく酔いしれた。

唇が解放されると、首筋に紅い跡を点々と灯されていく。

「銀さん、」

体が奮える。
銀時とキスをした事は何度かあった。

しかし、それ以上は今まで一度もなかった。

「愛してる、妙」

「だめ…ぎん…さ……あんっ…」

今までに知る事のなかった感覚が一気に押し寄せてくる。

妙の熱くなる体が、銀時の理性を狂わす。

「わりぃ…止まんねえ。」








深く深く

それは、息切れすら覚える鼓動。



甘い蜜にに誘われた
愚かな自分。


生涯忘れる事は
ないだろう。


しかし

それさえも今は

愛おしい。



気がつくと汗だくのまま横たわっていた。

「大丈夫か?」

その声に反応し振り向いた。
すると額に張りついた髪の毛を払われそこにキスを落とされた。

「痛かった…だろ。ごめん。」

「…」

正直痛かった。
でもそんなのどうだっていいじゃない。
この痛みは貴方が初めて私にくれたモノでしょう?


「責任とって下さいね。」

「お、おう。」

頼りない返事に小さく笑って見せた。




ねぇ銀さん。
どうか私を1人にしないで。

もし1人にするのなら、

一層の事、
貴方のその
甘い匂いだけは
残さないで下さい。


妙は銀時の腕の中でスゥスゥと安らかな寝息を立てた。


「どこにも行きゃしねーから安心して寝ろ。」


そんな妙をぎゅっと抱きしめながら銀時も瞼を閉じた。



また夢の中でも
逢えますように。







fin







あとがき

ちょっと短めのお話しになっちゃった(((゜д゜;)))

気付いた方もいらっしゃると思いますがaikoさんの「カブトムシ」を使わせて頂きました。

是非皆様も一度銀妙を想像しながら聞いてみて下さいねww



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