ブック2

□高瀬
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球技大会バレーボールの部で優勝した。
しかも私はMVPまでもらってしまった。
途中で顔面にボールを喰らって痛かったけど、そんなことは終わってみればどうでもよくなっていた。
「…なんだよ。」
「へへ。スゴイでしょ?盛大に褒めてよ。」
「やなこった。」
大会が全て終了して、教室に皆が集合したとき、隣の席の高瀬に今日の私の成果を自慢げに披露した。
だってMVPなんてそう簡単に貰えるものじゃないし。今自慢しとかないともう貰えないかもしれない。
「なんで?私あんなに頑張ったし、クラスで唯一のMVP受賞者なのに。」
「あれを頑張ったと言うのか。ただボール喰らってるだけにしか見えなかったけどな。」
「見てたの!?」
ニヤリ、と笑いながら言った高瀬の言葉に、私は驚いた。
あのカッコ悪いシーン、チームメイト以外は見ていないと思っていたのに。
「…ホント最悪。まさか見られてたなんて…。」
「見てなくてもみんな知ってるぜ?噂になってるし。」
「嬉しくないっつーの。」
どうせ噂になるならもっといい噂を流して欲しかった。
「まぁ、いいんじゃね?それがお前だろ?」
「それが嫌なのよ。どうせならかわいい、とかいう噂を流して欲しかったな。」
私がそう言うと高瀬は爆笑した。
失礼な奴め。
「お前そんなキャラじゃないだろ?」
「じゃあこれからそうしていく。学校一の美少女を目指すわ。」
私が冗談混じりで言っている時も高瀬は笑うことをやめなかった。だんだんムカついてきたんですけど。
「そろそろ笑うの止めてよ。さりげなく傷つくんですけど。」
「悪い。」
それでも止めない。まあ、高瀬が笑い上戸なのは知ってるけど。けどさ!
私がさらに言い返そうとしたとき、タイミングがいいのか悪いのか、担任教師が教室に入って来た。
言い返すタイミングを逃した私は、学生の性に従って椅子に座り直した、時だった。
「なぁ。」
「何よ?」
高瀬に呼び掛けられ、反射的に首を動かす。ようやく笑いは収まったようだが顔はまだ笑っていた。
「祝って欲しいんだろ?じゃあ帰りに待ち合わせしようぜ。何か奢ってやるよ。」
「うっそ、マジで?サンキュー。」
「じゃあ終わったら裏門のとこな。」
「了解。」
そう言い終わったところで丁度先生が話始めたので、私も高瀬も話すことをやめた。
 何を奢ってもらおうか、話終わった私はそんな事ばかり考えていた。









 

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