ブック2

□高瀬
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「……おい、次お前だぞ。」
「…ふえ?」
昼休みの直後で、体育の前の数学の時間。これはもう私に『居眠りしてください』って言っているようなものだ。
今日も素直に本能に従って気持ち良く睡眠していたとき、いきなり後ろの住人背中をつつかれた。ゆっくりと顔を上げると、私の前の席の友達が答えを書くために黒板の前に立っている。次に当たるのは私。
「……ヤバイ。凖太ここ分かる?」
睡魔は一気に消え去った。私は急いで机の中から教科書を引っ張り出して、次に自分が当たるであろう問題を探し出すと、親切にも私を起こしてくれた後ろの住人に助けを求めた。
「分かる、だって今説明されたばっかだし。」
「助かる〜。答え教えて。」
私の言葉に凖太がため息混じりに差し出してくれたルーズリーフを受け取り、前に向き直った。
凖太が真面目でよかった、ホントに。
「……なぁ。」
「何?」
凖太に再び呼ばれたけど、答えを写す作業に取り掛かっていた私は後ろを振り返らずに答えた。もちろん彼にだけ聞こえる小声で。
「…やっぱいいや。」
「何よ言いかけといて…よしっ、終了。」
あまり長い解答ではなかったからすぐに写すことが出来た。ルーズリーフを凖太にお礼を言って返して私は前を向いた。
さあ数学教師よ、いつでも来いっ!
「じゃあ次の問題をその前の奴。」
……あれ?私は…?
ゆっくりと後ろを振り返ると凖太が声を押し殺して笑っていた。
「……凖太、騙した?」
「騙したわけじゃねーよ、お前のこと先生が睨んでたから起こしてやろうと思って。目覚めた?」
「……私がホントに当たる前に起こしてよ。」
前でこっちを見ていた先生と目が合って、私は無意識のうちにため息をついた。

……今日は後ろから当たってたんだ。








 

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