ブック2

□高瀬
1ページ/1ページ



「夏休み何か予定あるの?」
答えは聞く前から分かっているけれど、何故か聞いてしまう。
人の悲しい性ってヤツだ。
「野球だな。」
「やっぱりねー。高瀬はそう答えると思ってたよ。」
私の予想通りの答え。すごい、さすが私…と自画自賛してみたけれど、多分誰もが分かる事だ。そう考えると少しつまらない。
「お前は?」
「私?私は暇人だからね、まず始めの一週間で睡眠不足を解消して、次はテストでたまってた読みたかった漫画を読んで、次は…」
そこまで答えると高瀬が哀れみの目で私を見ていることに気がついた。
しっ…失礼な!
「そっ…そんな目で見ないでよ。」
「…いや、可哀相なヤツだと思ってな。その予定酷いだろ。せっかくの夏休みなのにデートの予定一つないのか。」
「うっうるさいな。高瀬とは違うのよ。…ってか高瀬だって変わらないでしょ?野球三昧なんだから。」
そう抗議すると高瀬は笑顔で答えた。
…この高瀬の笑顔あんまり好きくない。
「俺らの野球は目標があるからな。それと違ってお前のは何にもないだろ?」
「いっいいのよ。高2の夏休みは一度しかないんだもん。来年はきっと追い詰められてるし今のうちに遊んどかないと…。」
我ながら、いい意見だと思う。高校生に対して説得力があるね!
「ま、遊び方が寂しいけどな。」
「うるさい。どーせ一人寂しく過ごしますよ。…っていうか私にそれだけ言えるって事は高瀬はデートとか何か予定はあるの?」
それでない、って答えたら私は責めるよ。人には散々寂しいとか言っておいて!
「…ま、仮だけど。まだ誘ってねぇしな。」
「…へー。じゃ早く誘っときなよ、じゃないと私みたいな暇人はいないだろうから。」
やっぱりそういう予定あるんだ。さすが、というか。
でも、自分から聞き出しておいてなんだけど、何故か複雑。何でかな?
「…そーだな、じゃ今日中に誘っとくか。」
「そーしておきなさい。何事も早目が肝心だよ。」
私がうんうん、と頷くと高瀬はおばさんかよ、っと笑った。
こっちの高瀬の笑顔は好青年、って感じで結構好きだな。
「…じゃあ来週の日曜どっか行こうぜ。」
「うん…って何?ゴメンよく聞いてなかった。」
そう答えると高瀬に軽く睨まれた。
しっ…仕方ないでしょ?聞いてなかったんだから!
「だから、来週の日曜遊びに行こうぜ。」
「…もしかしなくても、私?」
そうだよ、と高瀬は顔を背けた。その顔は心なしか…赤い?
「お前、暇人なんだろ?」
「えっ…うん。あっその…私でよければ。どこへでも行きますよ。」
その私の言葉に高瀬は少し笑った。……別に面白い事を言ったつもりはなかったんだけど、まいいや。
「じゃ、そういうことでよろしく。」
「あっ、こちらこそよろしく。」


夏休み、楽しみな予定が一つ増えた。



 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ