現代物

□いかれこれ
4ページ/10ページ

そして今日撮影当日、昼からパパッと撮るとかでゆっくりスタジオに行けば良いのだ。はぁーとため息を吐いてテルオの寝顔を見た。

するとパチッといつ目覚めたのか目を開けて、晴之を見てひと言。

「…今日もカワエーわ。はぁっ、罪作りや〜」

「へーへー」

慣れたものでテルオのクサイ台詞を聞き流して、床に散らばった服を手にとる。トランクスにシャツに靴下に…。手早くかき集めて身につけて行った。のそのそとしていると、テルオに手を出す隙を作ってしまうから。素早く痛む腰をだましてジーンズのジッパーを上げた。



恨めしそうな目で身支度を終えた恋人を見るテルオを「おいてくで」と一瞥してから、キッチンに行った。

二人で借りたマンションは狭いながらもキッチン、洗面所、ユニットバスとトイレ、六畳と四畳半の二部屋がある2DK。男二人が住んでも何とか暑苦しくない広さがある。お陰でケンカをして相手の存在が鬱陶しい時は、非常に便利だ。別々の部屋にこもることができるから。もっとも、すぐにテルオが部屋に入って来てなし崩しに仲直りをするのだが…。



朝昼兼用の食事は残り物のご飯を温め、酒のつまみのイカの塩辛をかけて食べる。

テレビをつけながら食べていると、ようやく服を着たテルオがキッチンに顔を出した、やっぱり黙ってたらエエ男やんな〜。

黙ってたらな…口開いたらあかんもんなぁ。アホがばれるゆうか、何てーか…。

苦笑いしながら晴之は席を立ち、テルオのためにご飯を温めて浅草海苔と梅干を出してやる。

にこ〜っと笑顔を浮かべて「幸せやな〜俺ってv」とテルオは茶碗を持つ晴之の姿を見てしみじみ言う。

そんな言い方おっさんくさいからヤメロと言っても聞かない。どんなに貧しい食事でも、毎朝、食卓風景を見て、口にする。

「こうやってハルの顔が見れて朝を迎えられるん、ほんま幸せv」と。

にっこり笑って殺し文句を吐いても、海苔が歯についていて間抜けなだけだ…。ぷっと晴之が吹き出しつられてテルオも笑うほのぼのとした朝の風景。晴之にとっても、大切な時間だ。

本来ならここで、いちゃらいちゃら愛の確認作業をするのだが…仕事の時間が迫っているので、食べ終わるとすぐに流しに皿を置いて、二人は出掛けた。





心斎橋にあるスタジオ。

晴之たちよりも早くスタジオ入りしていた大阪ガスダイナマイトは、丁寧にメイクをしてもらっていた。

日頃舞台に出る時は、ドーランでテカリを抑える程度でほとんど素顔だ。

だが、曲がりなりにもCDを出すので、ジャケット撮影に写真集撮影とあるので本格的なメイクをしてくれるらしい。

ここに座ってねvと言われて、大人しくメイクさんのされるがまま。クリームをぬられ粉をはたかれ口唇にはグロスをのせられ、髪をいじられてやっと解放された。

手渡された鏡で見ると薄い口唇が強調されて、ホスト崩れみたいに見えて思わず苦笑した。

気になってテルオを見ると、黒い短めの髪を立たせて浅黒い肌に切れ長の目がかっこいい。見慣れたはずの晴之でさえ見惚れてしまう。

傍にいたしゃララの今井と島本は「うわっ、兄貴みたい!!男前〜〜女殺しっっ」とはやし立てた。

なんで俺が兄貴やねんと顔をしかめていたが、ふっと晴之の方へ視線を移して顔を崩した。

「うわっ!ハル。めっちゃカワイイvいやぁ〜もう、そこで押し倒したいくらいやわっ」

「!!」

ドカッ、ゲシゲシゲシ。

晴之は真っ赤になって借り物の衣装やセットした髪形を崩さないように注意して、思いっきり脛を蹴り上げてテルオの自前の服を踏みしだいた。

次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ