現代物
□いかれこれ
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「…相変わらず、いちゃいちゃと…」
呆れ顔の今井が最後まで言うのを晴之は遮って、言い返した。
「誰がいちゃいちゃしてんねんっ!こいつが言うてる冗談、真に受けんでエエっちゅうねん!」
「え〜俺マジで言うてんのに〜。カワイイってv」
「…顔を殴られたいんか?お前」
静かに睨む晴之に、あっという顔をして「ごめ〜ん」とテルオは謝った。
これ以上怒らせると本当に殴られると悟ったのだろう。晴之は徹底していて、怒るあまり顔を見たくないと、部屋を一ヶ月出て行ったこともあったのだ。晴之は自分の容姿を普通以下だと思っているのでテルオの賞賛の言葉はあばたもえくぼや、恋人の欲目だと思っている。
第一、元モデルに言われても信じられないというものだ。
「ほならテルオハルオさん、お願いします〜」
スタッフが呼びに来たお陰でその場の空気が変わって、今井と島本は互いに顔を見合わせて胸を撫で下ろした。テルオハルオとは一緒に仕事をすることが多い。いつもテルオがオーラ-を出して、それに気がつくとハルオが怒り出して暴れるのでいつも被害を被っていた。
テルオのオーラというのもハルオに近づくものは全て目で殺す、威力のある熱視線で…。別の意味で恐ろしいコンビだったからだ。
パシャ、パシャ。
ホストみたいなスーツを着た姿で、カメラマンの指示するポーズをとり、フラッシュを何度も浴びた。目に眩しくて言われるような笑顔にはならない。
「ちょっと硬いよ〜ハルオ」
にいっ。やけくその笑顔で答えるとカメラマンも諦めたのか何も言わなかった。
トントン拍子にテンポ良く撮影も進んでいき、ガスダイのフンドシ姿の撮影も快調に行われた。
一時間ほどスタジオの端で、撮影を見ていたら次は「テルオハルオの水着やから〜」と言われて手渡された水着に驚いた。
水着ってこんなに布地が少ないものなのか?
晴之のそう大きくない手のひらの上に小さくたたまれた派手な配色の物…。
両手で端を持ち広げて見ると、三角部分の真ん中で色の切り替えがある何ともいえないデザイン。股がみも浅い、これやったら見えてまうやんかっと突っ込みたいような代物。いや、海の中では着たらあかんやろう…。脱げそうやし、見えそうやし。
「…どないしたん?」
身動ぎもしないで固まって水着を手にしている晴之を不審に思ったのか、顔を覗き込んできた。
「い、いやっ、なんもない。ほな着替えなな」
やばい、ここで水着を見せたら、テルオは怒り狂って何を言うか分からない。急いで控え室に走った。
パパッと着ているシャツやズボンを脱いで、ハンガーにかけて水着に足を通した。が、!!晴之の履いてきた下着は、タイトな水着からはみ出てしまい見苦しい。…も、もしかして下着を脱いで穿かんとあかんのか?たら〜っと汗が腋の下を流れていく。