現代物

□いかれこれ
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そんな空気を読めなかったのか、ガスダイの遠藤が言ってはならないことを…。

「うわっハルオの水着すごいな〜ケツ半分以上見えてるわ、これやばぁ〜」

ピキピキッ。

凍りついた空気を何とかしようと晴之は貼り付いた笑いで「でもなぁ、たまにはこんなんもエエで」と言ってしまった。

「え〜でも透けそうやしヤバないん?」

気がつかない遠藤は大笑いして、パチパチ晴之の背中を叩いてくる…。嗚呼、神様。晴之は頭の中で十字を切った。

「大丈夫やって、こ〜ゆんも着こなしてこそのハルオやし〜」

自分でも訳わからんようなことを言って、その場から避難するためにセットに急いだ。

撮影中もテルオは無言で、カメラマンから指示される笑顔を見せはするものの、目は笑っていなかった。





「…ぱんつがあらへん」

撮影をマッハで終わらせて着替えて帰ろうと下着を探していたが…。

何処を探してもないのだ。晴之が穿いてきたサポートタイプのトランクスが!!撮影で水着姿になるからと、ヒモパンを渡されて穿いてはいるが…。
これを穿いて帰るつもりはない。

ちゃんとしっかり布地で包んでくれる下着でないと落ち着かないし、気持ち悪い。

撮影中は緊張していたから何ともなかったが、股に食い込んで…何ともかんとも言いようのない感触で。

「なぁ、テルオは知らへん?俺のん」

手早く着替えてイスでくつろぐ相方に訊ねるが、黙ったままで答えがない。

「……」

「テルオ?」

派手な水着を下に着て上半身はアロハシャツという間抜けな格好で、カゴの中やカバンの中を探したが、見つからない。

「…お前そのカッコ気にいってんやろ?ほならエエやん」

「へ?」

バカ面で聞き返した晴之に、テルオは拗ねたように顔を背けた。

「そんな水着でスタジオ中悩殺してもて…反省してもらわな」

「…ちょお待てや。何で俺がこないな目にあわなあかんねんっ。こんなんっ」

「え〜?エエわってゆうたやん自分。せやから、そんなん言うたーあかんわ」

抜け抜けと…隠しといて!クソ。

本当に下着なのかと問いたくなるヒモパンしか穿いていないのだ…。その上に水着…。

ジーンズを穿いて帰るのだが…選択は二つに一つ、おまけに着替え終わるまでテルオはそこで待つという…。いつまでもスタジオにはいれない、早く出て行かなければならないし…。

と言ってこいつの前で水着を脱いで、あのヒモパンになるということは…飢えた犬に肉をちらつかせるような危険なことだった。だが衣装で帰るということは、買取を意味するので金欠の晴之は仕方なく、苦渋の選択をした…。

食い込むヒモパンにジーンズ…アメリカ人やあるまいし!!スースーして落ち着かない。何よりジッパーを上げる時に毛を挟んで何本か抜けて痛かったし、生地が厚くてごわごわして微妙な所をヒモと生地でこすって痛いのだ…。昨晩散々嬲られた所が!!

にま〜っと男前の顔を崩しているだろうと思われるテルオの視線を、尻に感じてかなりつらい。一刻も早く帰りたい。身の危険を感じて晴之は急ぎ足で、後ろのテルオを振り返らずにスタジオを後にした。





阪急電車の梅田発京都河原町行きの電車に乗って、晴之は何度も車両内で触られて、そのたびに身を固くして声を殺した。

時間も時間で人もまばら、エスカレートしてくるテルオの指のいたずらに、最後には泣きながらジーンズを脱いだことは想像に難くない…。

二人が自宅に帰り着いたのは次の日だった…。





END.

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