小話
□与太(者たちの)話 7編
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「…はやっ…すぎ…もっ、すこっ……ぁあっ、ゆっくり…」
「早いィー?ウソばっかり言うてェ。もう、まーくんのこんなんになってる、で?」
ぎゅっと勃ち上がった河合の性器の先端を親指の腹でなぶる。「ヒッ」と小さな悲鳴を上げて河合は体を揺らした。足の間に深々と富田を受け入れている部分がきゅっと強く締め付けて、富田の快感はさらに強いものになる。
河合はその仕打ちに少し恨めしそうに涙で潤んだ目で富田を睨む。その間も富田の手の中の性器はどくどくと脈打って、河合は全身で感情を表現する。その表情が堪らない。
興奮で白い肌が薄っすらと紅く染まり何とも言えない。河合の表情や肌を見ているだけで、富田の下半身は熱くなってくる…。
ああ、最高や!
この色っぽい表情に、声。
「あっ、あっ、あっあんっ……もっ、もっとっ、あんんっ」
甘い声が絶え間なく富田の耳に聞こえ、もっと深くもっと深くと抉るように腰を動かす…。
「…まさしっ」
白い胸を反らせて達っしようとする河合の体を掻き抱いて…。
掻き抱いて…、あァ?
何でや、何でまーくんの体を抱き締められへんねん。
手を伸ばしても手を伸ばしても…。
手は温かい河合の体を捕らえることはなくて…ただ空を掴むのみ。
両手を布団から出して天井に向け必死で掴もうとしている所で、富田は目が覚めた。
手を突き出したままで辺りに目をやって、自分が大阪の自室代わりに使っているホテルのベッドで眠っていたことを認めた。ベッドサイドの時計の針は午前三時を差していて…。
…夢か。
せやなァ、あんなことまーくん言わへんわなァ。第一、あんな表情を見してもうたんも一回こっきり。
俺はしっかり覚えてんのに、まーくんは酔っ払ってていっこも覚えてへんときてるし…。
富田にとって性行為は自分も相手も覚えていてこそのもので、お互いが燃えて乱れた時なぞは特に…。次回が楽しみになるわけで…ステップアップステップアップで相手も富田も楽しい。
富田自身そりゃーもうと言うくらい男も女、比率的には女の方が若干多いがある程度の数を抱いて来て、それなりに評判も良くて…。
「へたくそ」
俺ほんまに自信なくすわ…。
酔っ払った河合に言われた言葉が頭の中で何度も繰り返される。
がっくり肩を落として富田は、先ほどの夢で変化した下半身を前に大きくため息を吐いた。
ベッドから起き上がり、富田は携帯電話の電話帳をあ行から順に表示して、午前三時は丑三つ時やったっけ、それともちゃうかったやろか…。この時間に呼び出して体空いてるゆうんは、ロクなんおれへんしなァ、ぶつぶつと呟いてめぼしい相手に電話をかけて見るが…。
『電源を切っているか、電波の届かない…』情緒にかける声が返ってくるばかり。
「どいつもこいつも!」
クソっと乱暴に電源を切って腹立たしげにベッドに腰を下ろした。プロを呼ぼうにも富田お気に入りの女たちは売れっ子故、この時間帯では掴まらないだろう。また無理に呼び出せば、後々面倒なことにもなる。
富田は諦めて眠りにつくことにした。
が、いくら部屋の灯りを落として暗くしても、いったん目が覚めた目や体はなかなか眠りに入れない。ごろごろと右に左にと寝返りを打つこと三十分。
あかん…眠れへん。
うーん。何かええ方法はあらへんもんか…眠なるような。
ああでもないこうでもないと考えて、昔から数を数えれば眠くなるというのを富田は思い出した。大抵、百まで数えるまでに眠りについているらしい。これならええわ、とにんまり笑顔で数を数えることにした。
数なァ…。
そうやなァ。何がええかな、羊なんてありきたりやし。やっぱり…。
ワイシャツ姿のまーくんがひとり、ベルトを外したまーくんがふたり、下着姿のまーくんがさんにん、全裸のまーくんがよにん…、よにんかぁ…。よにんもおったら、ひとりにはアレしてひとりはハメて…いやいや数数えてたんやった。そうやそうや…よにんまで数えたし、次は…ごにんやった。M字開脚のまーくんがごにん、うーんええ眺めやな〜〜。いやいやほんでもって…ろくにんやろくにんは…四つん這いのまーくんが……。
もわもわもわ〜と目の前にちらつく河合の白い尻…。
薄い体毛で覆われた股間、細い足…。
あ、あかんわ…ますます目が冴えてきてもうた。
おまけにさっきよりも下半身に熱が集まってきている。いや…完全に勃ち上がってしまった、のだ。
痛い位に富田のご自慢のモノが勃ち上がってパジャマの布地を押し上げている。
これはガマンできる段階を当に越えている。
血走った目でベッドから這い出し前屈みで富田は、ソファの方へ移動した。ソファにはノートパソコンと共に富田が大事にしているものが置いてある。それを取り出して富田はまたベッドへと戻った。
女も男もいない…。
となると、かちかちの股間を沈める方法はただひとつ…。
月明かりを背に受け、富田は左手に河合のアイコラ写真(裸にネクタイを締めて靴下だけの写真)を握り締めて、夢中で自分を慰めた。
そう…約束の時間になってもいっこうに起きて来ない主人に痺れを切らした畑野が寝室に入ってくるまで…。
終