現代物

□君の涙に虹を見た…
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<<できるかな。>>





某月某日、東千代ノ介はいつもながらぼんやりと両肘を突いて、外を眺めていた。

窓の外はしとしとと雨が降っており、そういえば梅雨入りしたんだ〜と何とはなしに感慨に耽っていた…。いや傍からは『まぁた、東くんどっか夢の中に入ってるわ』にしか見えないのだが…。

結構、雨きつく降ってる…今頃りょーくん営業で花丸商事回ってるのかなぁ。この前、新規開拓ができたんだとすっごく嬉しそうに教えてくれた。お祝いしようね!って言ったのが、確か十日前で。あれから忙しいらしく電話もメールもない。やっとメールを見ること&漢字で送るができるようになったのに。



ちょっと、何だか…。

さみしいよぅ。



どんよりアンニュイな東を尻目に昼休みともあって、社員たちが慌ただしく昼食を食べに行く。社員食堂も充実しているこの美若食品株式会社だがここ最近何故か女子社員たちに限って、ビル前にやって来るワゴンの弁当屋から弁当を買っていた。

何でもその弁当屋は男ふたりが売りに来るのだが、ひとりは身長が高くて男前、もうひとりはとっても美形!目の保養と腹の保養にもってこいらしい。また、味の方もかなり美味しいと評判で、先輩社員の大野もこの前味見して、かなりイケルと驚いていた。

梅雨入りしてからこっちまったく姿を見かけないとぼやきながら、東と同期の三竹は慣れたもので、皆の注文を順々に聞く。東も聞かれて、「焼飯!」と元気良く答えた。

電話口でラーメン三人前、天津飯、酢豚、冷やし中華…すらすらと頼む。いつも東は、それを横目で見て、すごいなぁ〜と感心するのだった。東も何度か注文したことがあるのだが、皆のメニューが覚えきれず、いちいちメモを取ってまとめていたのだ。それでも間違えてしまうのが何とも悲しい…。さすがにそれを見た女子社員たちが東に頼まなくなったのだ。



店員が注文を繰り返して間違いないです、じゃあお願いしますね〜と朗らかに返事を返して三竹は受話器を置いた。

「十分くらいで届けますって〜」

そう言いながら三竹は慣れた手つきで順々にお茶を入れていく。はい、と東も手渡されてありがとうと受け取る。課の女子社員と共に食事につくのもそう大して浮かなくなってきた今日この頃…。

世間話から新しく出た美白を謳った某国産化粧品会社の二万円する美容液や胎盤クリーム、保湿剤へと話が転じる。ところがだんだん話がそれていつの間にか、現在の交際相手の話に変わって行った。

すっかりこの部署はつい先ほどまでのオッサン臭い空気から、女子校炸裂パワーの雰囲気になっていた。



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