現代物

□君の涙に虹を見た…
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イイ年してしかもモテない訳でもないのに何の因果か、こんなオバカに惚れたんだろう。

嬉しそうにアニメに見入る東の横顔を、半ば諦めた境地で見る。

無理矢理に先に進めば、東が金で相手をしたおやじ達と一緒だし、何より嫌がるのを無理矢理というのは…。ちょっと心惹かれるが、いやかなり惹かれてしまう。嫌がる東を裸に剥いて、したい放題…。楽しいだろうし想像しただけでも興奮する。

しかし、ヤった後のことを考えると、なかなか一歩前に踏み出せない。

気持ち良いのはヤル方だけで東は、ヤラれる方は…。かなりの苦痛を伴うことは、男同士の性行為に疎い俺でも想像がついた。

それを分かっていながら、東に強要してもいいのかとか…。



いや本当はたぶん、した後に嫌われたら…二度目は嫌とか言われたら、どうしようってのが本音。

好きだとは言ってくれるが、本当の所はどうなんだろうと…。あのバカは本当に意味、分かっていってるのかと疑いたくもなる。

好きは好きでも、俺の好きは東を抱きたいってことで…お前の好きってのは一体どういうのを言うんだよ?

アイスが好きとかハチミツが好きと同じじゃ困るんだ。何度もその言葉を口にしかけては、飲み込んでしまう俺…。

恐いんだ、アイスの方が好きだとか言われたらきっと、立ち直れない。絶対に言わないって言う保証ないもんなぁ、こいつの場合は。



ふうっとため息が続けざまに出てしまう。

秋の夜長に物憂くため息を吐く男前、絵になるが、相手が相手だけに…通じないか。



「ねぇ、どうしたの?」

もたれかかった背中から、何度もため息を吐く俺に気がついたのか東はアニメから目を離して、俺を見た。

大きな真っ黒い瞳が少し心配そうに揺れている…。ああクソ、かわいいな〜チクショウ。

「……」

答えないで東の顔を見ている俺のシャツのすそを引っ張って「どうしたの?」と返事を促した。

「いや…別に。何でもない…アニメ見なくてもいいのか?」

毎週金曜日は仕事か忙しい時は、わざわざタイマー録画してまで見るアニメだ。俺のほうを見てくれるのは嬉しいが、後でムクレられても困る。

「…だって。何度もため息吐いてるし…何か心配ごとかなのかなって」

たま〜に東は俺がドキッとするようなことを言う。まるっきり鈍感でオバカってわけでもないのだ。



だから、いやと俺は答えて、振り返った東の顔に手を伸ばした。触れるか触れないかの所で、指は止まった。

東が俺の大腿に手を置いたからだ…。そんな意味がないだろうスキンシップも実は、辛かったりする。

「…東…手をどけてくれないか」

「えっ?」

どおしてと不思議そうに東は首を傾げて、俺を見る…。気づいてくれよ、東。

固まったまま俺は東を見つめた。うーんと、少し眉根をひそませてから急にあっとした表情になった。

東は少し恥かしそうに言った。

「……あのっ、ふ……のが…あたっ…」

最後まで言えずに、潤んだ瞳で俺を上目使いで見た。そうだよ、勃ってんだよ。東が手を置いた途端に俺の下半身は正直に反応していた。

そりゃ健康な男だから仕方ないっちゃー仕方ないんだけども…。少し俺も気恥ずかしかった…。

だってそうだろ?たかが足に手を置かれたぐらいで硬くしてるなんて!中学生じゃあるまいしっ!



しーんと黙りこくってしまった二人だったが、東は急に立ち上がった。

へっ?と呆然としている俺を尻目に台所に消え、戻って来た東の手には…。



ハチミツが!!

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