現代物

□1989
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※ トンチキワールドである事はとうにご承知とは思いますが、ちょっと痛い描写がございます。見た後に文句は言いっこなしお口はチャック一文字でお願いします。



どちらからだったろう…真夏の海辺に出たい、と言ったのは。大人の男二人での宿泊、好奇の目で見られることを恐れ、知り合いなどが絶対に来そうにない、沖縄からさらに船で一時間近くかかるこの場所を決めた。互いに休みをやり繰りしてやっと一週間の長期休暇を取った。

南の島でのんびりと恋人と過ごす。柄にもなく、不思議な海の色に浮かれて外に出たのが失敗だった。夜空に浮かぶ星々と打ち寄せる波の音に、単純な昭彦はすっかりその気になってしまった。

愛してるとか好きだという台詞を連発して、俺の体を砂浜に押し倒した。情熱的なキスと南の島での開放的な空気に流され、いつもならば人目を気にして抵抗するのに、その日は…昭彦の愛撫を受け入れてしまった。

両手を彼の背中に回して自分からそのキスに答えていた。着ていたシャツは捲し上げられ、昭彦の大きな手に乳首を捏ねるように弄られた。互いの性感を知り尽くした愛撫は瞬く間に俺の体に火を点けた。酸欠になりそうなほど口腔内を激しく動き回る舌に、俺は興奮して頭がぼうっとなった、その時だった。

下卑た笑い声と野次が、耳に突き刺さった、慌てて閉じた瞼を開けると…。

俺と昭彦は五〜六人の男たちに囲まれていた。あっという声を俺が上げる前に、俺の上にあった昭彦の体は宙を飛んでいた。蹴り上げられて「ぐえっ」とうめき声と胃液を吐きながら…。飛び起きようとした俺の体は、胸の上に乗せられたサンダルによって、再度砂の上に戻された。

「お前ら、ぐちょぐちょ男同士で犯ってたんだろ?…あぁ?」

どうなんだよ、と今度は股間をサンダルで踏みつけられた。

「てめえらのチ×コ扱きあってケツに入れんだろ。おらっどうなんだよ」寸前まで勃起していた性器は突然の恐怖にすっかり縮こまってしまっていたが、痛みを感じない訳ではない。痛みにうめきながら、俺は見てしまった…。狭い視界が俺に見せたものは…、一度も後ろを振り返らずに砂浜を駆けて行く、昭彦の後ろ姿を。
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